エゴとインナーチャイルド

 エゴは常に自己防衛的です。なぜなら、恐怖の中で自分を守らねばならないとして生まれてきたからです。エゴにとっては、この世の中、自分の人生はいつも危険な状態であり続けています。そのため、自分の身を守るために、周囲との対立を作り、相手を敵視し、危ないときには恐怖や不安を使って逃げようとするか、あるいは怒りを使って相手を攻撃しようとするのです。

 エゴはインナーチャイルドの存在を完全に否定しようとします。なぜなら、対立関係にある敵に自分のみじめな弱い姿など絶対に見せられないし、また自分自身に対してもインナーチャイルドの存在を隠しておかなくては、愛に目覚めてしまう可能性が高くなってしまうからです。エゴはインナーチャイルドを心の奥の奥の牢獄へ閉じ込めて、決して見えないように封印してしまうのです。

 そうやって、エゴは自分と相手に虚勢を張って生きることになるのです。他人は勿論、自分自身もそうやって自分の本当の姿を隠されてしまうため、今の物理的な自分、社会の中で生きている勇ましい大人の自分がそのまま自分自身の姿だと思い込まされてしまうのです。しかし、自分の本当の姿はエゴが必死になって隠してきたインナーチャイルドなのです。

 怖くて一人ぼっちで苦悩してうずくまっているインナーチャイルドが、精一杯虚勢を張って生きている自分の姿を空想しているのがエゴの実体に過ぎないのです。やっていることは勇ましくても、実は心の中で半分死んだように横たわっています。そして、死にかけている心の中で必死に勇敢な自分、誰にも負けない自分、手助けなど必要としない強い自分を心に描いているのです。

 そこに描かれているのがエゴの自分であることに我々は気づかないで生きてきたのです。したがって、我々がエゴで生きているときには、インナーチャイルドの視点からしか物事をとらえることができません。それは、自分は常に孤独で危険であるという立場です。自分の身に起こるすべての事象をこの色眼鏡を通して、エゴの自分は見ているのです。

 エゴの視点を通して見る世界観は概ね以下のようなものになるはずです。

−インナーチャイルドなどいない
−この世界は戦いだ、競争だ、生き残るためには勝たなければ
−自分は頑張って生きてきたのに、なんだか辛い
−生きている意味も目的も分からない
−他人を信用することなどできない
−我慢すれば生きていける
−世の中は悪いこと、いやなことで満ちている
−自分は孤独だ
−自分はダメな存在だ

 これらはエゴの視点、つまりインナーチャイルドの色眼鏡を通してみた世界や自分の姿なのです。同じものをオリジナルの自分、つまり愛に満ち溢れている自分の視点で見直してみると以下のようになるはずです。

−インナーチャイルドはいてエゴという幻想を作り出している
−この世界は愛に満ちている、勝ち負けではない
−自分は頑張る必要などない、ただただ心が満ち足りている
−生きている意味、目的は怖れを手放し愛に目覚めること
−他人との一体感があり、自分も他人も一緒
−我慢しない、あるがままの自分でいい
−世の中の悪いこと、いやなことは幻想に過ぎない
−自分は全てと一体だ
−自分は愛の存在だ

 これほどまでに、エゴの視点と愛の視点は異なるのです。通常我々はそのどちらの要素も持った状態で生活していますので、上記のような両極端なことにはなっていないことが多いのですが、双方を分けて見てみるとこのように違いが歴然としてきます。

 またエゴはインナーチャイルドの存在を否定するために、それが持っている素直な本音を全部否定して隠してきたのです。その本音とはどんなものがあると思いますか?例えば、

−愛が欲しい
−助けて欲しい
−守って欲しい
−受け止めて分かって欲しい
−抱きしめて欲しい

などです。自分を守らねばならないエゴにとっては、このような本音というのは大変な危険因子となるのです。虚勢を張って強がって生きていくためには、こんな弱々しい本音など邪魔なのです。幼い子供にとって、まだ自分が愛の存在だという充分な自覚が持てないうちに、恐怖の体験をしてしまうと上記のような本音が発生してしまうのです。

 その結果、求めても手に入らないと悟った後に、エゴが生まれてくるのです。生まれ育っていく過程で充分な愛の中で育まれていくと、自然と自分は愛の存在だという自覚ができてきます。その後に恐怖が来ようとも、もうすでにエゴを発生させる必要はなくなってしまっています。自分はすべてに愛を与える存在のままで生きていけるのです。

 しかし、実際にそのような成長過程を持っている人はおそらくいないのかもしれません。なぜなら、私たちが生まれてきた理由は、エゴの罠の中に一旦入って、自力で愛を取り戻す壮大な旅をするためだったからです。キリストや仏陀などのごく少数を除けば、すべての人間はこの旅を死ぬまで続けていく存在とも言えるのです。

 自分のエゴから解放されるためには、エゴが隠してきた上記のようなインナーチャイルドの本音に気づいてあげることがとても効果的なのです。自分のインナーチャイルドは本当はどう思っているのか、しっかり寄り添ってあげてその本音に気づいてあげることです。そして、その本音を声に出して何度も何度も繰り返し言ってあげることです。それがエゴにとっては一番の脅威なのです。

 そのようにして、インナーチャイルドの本音に充分寄り添ってあげると、今まで抑圧していた感情も一緒に出てきて開放されるのです。感情が開放されると、それをエネルギー源にしていたエゴのパワーが減って、愛を選択することが容易になっていくのです。そうすると、今までの無意識の対立関係が緩んできて、自然と素直な自分が顔を出してきます。それはとても気持ちのいい体験なのです。



〜催眠療法〜 ヒーリング オフィス ルシッドのTOPページへ