自分を褒める基準について

 コラム『自分に言ってあげる三つの言葉』の中で、「えらいね」などの言葉で自分を褒めてあげることの大切さについて書きましたが、どんなときに自分を褒めるのかということについてもう少し掘り下げて考えてみたいと思います。

 クライアントさんに自分を褒めるとしたらどんな時かとお聞きすると、多くの方は少しの間考え込んでしまい、自分を褒めるようなことは見当たらないというのです。それでも探し続けてもらうと、頑張ったときに褒められるかもしれないとおっしゃいます。つまり、無理して辛抱して頑張って何かを成し遂げた時には褒めることができるというわけです。ではなぜ頑張った自分はえらいのか?という質問をすると、多くの人はそこで答えることができなくなってしまいます。

 みなさんも頑張った自分を褒めることにそれ程違和感を持つことはないはずです。それなのに、なぜそう思うのかと聞かれると明確に答えることは難しいはずです。それはなぜでしょうか?答えは簡単です。それは自分の中に明確な理由が見当たらないからです。頑張った自分を褒めることは習慣づけされているだけで、頑張った自分を褒めるきちんとした理屈など元々ないということなんです。では一体どこからそんな習慣が持ち込まれたのでしょうか?

 それは幼少期からずっと続く親との関係や、周りの大人たちからもらってしまったものなのです。例えば、頑張って勉強して成績が上がれば、親は嬉しいから褒める。徒競走で一等賞になれば、えらかったと言って褒めてくれる。頑張って家のお手伝いをしたらお母さんが褒めてくれる。毎日忘れずに宿題をやっていくと、先生が褒めてくれる。こういったことが日々繰り返されることで自分が褒められるときはどういうときかということが条件付けされていくのです。確かに褒める大人の側からは、自分にとって都合のいい子だったり、世間体のいい子であると、嬉しかったり自慢に思えるので褒めるというしっかりとした褒める基準があるのです。しかし、褒められる側の子どもとしては、自分自身の中には褒められる理由はないということです。

 それにもかかわらず、我々は大人になっても子どもの時に褒められた親などからもらった基準を使って自分を褒めようとしてしまうということです。親に褒められると嬉しいので(共感されてない子どもの場合は特に)、子どもは親に褒められることを目指して頑張る人生を送るようになります。そのためには、少々辛くても苦しくても我慢してしまうのです。これでは自分のために生きていることにはなりません。まるで親のために、親を喜ばせるために生きているようなものです。これでは絶対に幸せになることはありません。自分のために生きていない自分を認めてあげることはできないからです。

 幸せになるためには、そこから脱出して新しい自分独自の自分を褒める基準を作ってあげる必要があります。その基準とは、自分が心地よい思いができている、自分が楽しい、自分の人生を幸せなものにするための言動ができている、そう言うときに自分にえらいと言える、そういう基準であることが大切ではないかと思います。そしてどんなに些細なことでも、その基準を満たしていたらしっかりと自分を褒めてあげることです。例えば、気が向かない友人からの誘いを率直に断ることができたら『えらい!』ですし、自分の身体に気を使って腹八分目でやめられたら、やはり『えらい!』ということです。

 こういった新しい基準で自分を褒めることは、実際にやろうとすると思っていた以上に難しいということが分かります。それは、長い間に自分の中に刷り込まれてきた基準があるために、放っておくと知らず知らずのうちにその基準を使ってしまうからです。相当に意識して自分の言動をチェックして新しい基準と照らし合わせる作業をしないと、負けてしまいます。そして、新しい基準で自分を褒めることが難しい理由のもうひとつは、褒めるときに他人と比べてしまうということがあるのです。

 自分のためになるようなことができたと思っても、いざ褒めようとしたときに、よく考えてみるとこんなことは誰でもやってることだし、こんなことできて当たり前だろうと思えてきたりします。こうなると褒めることがくだらないことのように感じてしまい、できなくなってしまうのです。自分を褒めることは、自分を認めてあげる大切な作業ですので、人と比較する必要は全くありません。褒めるときに人と比べてしまうこと、そのこと自身も親からもらってしまったやり方と考えて間違いないのです。

 人と比べることなく、自分をごまかすことなく、自分のために生きていると思える時には、誰はばかることなく自分に『えらい!』と言ってあげて下さい。毎日夜寝る前に、その日の自分の言動を思い出して、新しい基準を使って褒められるときはできるだけ素直な気持ちで自分を褒めてあげるのです。そしてその逆の場合、つまり自分の人生のためにはならないと思えることをしてしまったと思えた場合には、自分を責めて駄目出しする代わりに、『ごめんね』と言ってあげることです。こうすることで、自己嫌悪のエネルギーが減ると共に、自分をしっかりと認めてあげられるようになっていくでしょう。実践あるのみです。



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