疾病(しっぺい)利得について

 病気や事故などによる痛みや苦痛の症状というのはとてもいやなものですね。だから病気になりたくてなっている人なんていないと思うのが普通の考え方です。しかし病気になることによって本人が何らかの恩恵を受けることができるとしたら話は変わりますね。実はこういった病気になることによって本人が受けるメリットのことを疾病利得と言うのです。疾病利得は本人が気づいている場合と、全く気づかないでいる場合がありますが、ほとんどの場合には本人の自覚がないのが普通です。

 例えば、鬼嫁にいびられている姑がいるとします。その姑が具合が悪くなって病院に通うようになってから、嫁がやさしく接してくれるようになったとすると、姑は病気でいる方が嫁にやさしくしてもらえるという疾病利得を意識するようになるのです。そうやって、それほど具合が悪くなくても病院通いが続くことになるのです。学校に行きたくない子どもがたまたま腹痛になって、母親に介抱してもらえると同時に学校に行かなくて済むことを覚えると、それが疾病利得となってその後もたびたび朝学校へ行く前になると腹痛を訴えるといったことが起きるのです。

 上記のような場合には、本人が気づいていて、半ば仮病のようにして症状を訴え続けるということもあり得るのかもしれませんが、必ずしも気づいている場合ばかりではないかもしれません。一方、本人はまったく意識することができない疾病利得の典型的なものとしては、子ども時代の夜尿症、つまりおねしょがあります。おねしょをしてしまった子どもはきっと怒られると思ってとても自分を責めてしまうかもしれません。しかし、子どもの潜在意識では、おねしょによって親からかまってもらえるというメリットがあると考えているのです。何となく母親と心が通じてる感じが希薄な子どもは、何とかして注目を得たいと心の奥で思っているのです。それがおねしょという形で具現化されるのです。

 おねしょ以外にも子どもが親に自分の方にもっと目を向けて欲しいという願いが起こさせる症状としては、不登校があります。親も本人もなぜ学校へ行けないのかという本当の理由は分からないので、毎日のストレスは大変なものとなってしまいます。親はいつになったら行ってくれるのかと心配するあまり、明日こそ行けるよねと念を押します。子どもの方も親に迷惑をかけているし、学校に行けない自分にも情けないと感じているので明日こそは行けると約束するのです。しかし子どもの潜在意識としては、そうやって親が自分のことを心配して気にかけてもらえるという恩恵を受けているのですから、なかなか学校に行けるようにはなりません。

 年齢に限らず今や五人に一人は鬱的な傾向を持つと言われる時代ですが、鬱の症状が軽い場合はともかく、重くなってくるにしたがって本人は何らかの明らかな恩恵を得ているものと思われます。実際に、鬱病になってしまった人の苦しみというのは、とても他人には計り知れないくらい大変なものなのだろうと想像できますが、それでもちゃんと鬱状態になったことでの疾病利得というのがあるのです。それは自分を辛い状態に追い込んでいる毎日から開放されるというメリットなのです。今のままの毎日を続けていくことの限界を潜在意識が感じたときに、鬱状態を使って身体を動かすことができないようにしてみたり、何もする気が起きなくして辛い現実から逃れようとするのです。

 私が幼稚園に通っているときに、日本脳炎の予防接種を受けた夜から突然膝の関節を曲げることができなくなるという症状が出たのです。最近では日本脳炎の予防接種の副作用が100万人に一人くらいの割合で起きるということが取り上げられるようになっていますが、今から45年も前の頃のことですから、副作用のことなどもはっきりとは分かっていない時代でしたので、何度病院へ行っても首を傾げられるだけで何も分からなかったのです。一方自分は、行きたくない幼稚園を休めるだけではなく、母親と一緒にいて思う存分甘えられるという最大のメリットを享受していたのです。

 半年くらい幼稚園をお休みしたあたりでその症状は自然と消滅してしまい、その後は何事もなかったかのように幼稚園に復帰しました。今になって思うと、何とか母親と一緒にいたいという潜在意識の思いが、予防接種の副作用を利用して発症させたのだろうと感じるのです。そのくらい強い思いが幼かった自分にはあったということです。そのことは、今から数年前にあることではっきりと気づくことができたのです。それは、幼い自分と対話をするという癒しのワークをやっていたときに、幼稚園時代の子どもの時の感情がものすごい勢いで出てきて、大人の自分はわけも分からずただ感情の放出が終わるのを待っているという経験をしたことがあったのです。

 このように、潜在意識の中にこうしたい、ああして欲しいという強い願望があると、本人の表面意識とは無関係に病気を利用してまでもそれを実現しようとしてしまうのです。更に、疾病利得というと、病気により得られる利益という意味になりますが、潜在意識が願望実現のために利用するのは何も病気ばかりではなく、事故による怪我や災害なども利用すると考えられます。ここまで話を膨らますと科学的根拠がなくなってしまうと思われるかもしれませんが、沢山のクライアントさんのお話をお聞きすればするほど、こういった考えが自然と湧いて出てきてしまうのです。

 このように見てくると、疾病利得というものが何か特別なものであるとか、ごく稀なものとして捉えるのは間違いだということが分かると思います。子どもやお年寄りに多いということでもなく、大人にとっても本人の潜在意識の中にある強い依存心などが原動力となって、疾病利得を勝ち取るために病気などを起こすのです。自分が何かの症状を抱えているとして、それがなかなか解決しそうにないような場合には、一度発症していることのメリットはないだろうかと疑ってみることは充分に意味のあることかもしれません。病気に限らず、怪我や事故などが頻発するような場合も同様です。

 そんなところにメリットなんてあるわけないだろうというような馬鹿馬鹿しいことや、奇想天外なことも含めて、考えうる限りを洗い出して見るのです。もしかしたら、その中に今まで思いもよらなかった自分の本音の部分が見つかるかもしれません。そしてそのことをきっかけとして、自分の心の内が少しずつ透けて見えてくるかもしれません。人から言われてなるほどと思うのではなく、自分自身で気づくことが大切なのです。そして心の深い部分で納得できたときには、自然と症状は消えてしまうかもしれません。



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