夢からの覚醒

 我々が寝ている間に見る夢の内容がたとえどんなものであっても、それは自分自身の心の内面、つまり潜在意識、あるいは無意識が作った産物であるということに意義を唱える人は今ではいないはずです。それと同じように、エゴが作った幻想の内容がたとえどんなものであれ、それはエゴの内面が作った産物であるはずです。

 つまり、幻想というのはエゴの内面を投影したものだけで成り立っているのであり、幻想の中に自分の投影以外のものが入り込む可能性は全くないのです。したがって、私たちが見ているこの現実という幻想は、そのすべてがエゴである自分の内面の投影であるということです。周りで殺戮が起きようが、天災で多くの人の命が犠牲になろうが、その一切合財が自らの投影を見ているに過ぎないということです。

 この幻想を作り出しているのがエゴであるため、エゴの本質ばかりが投影されているのです。残念ながらエゴの本質は、分離に基づく罪悪感、恐怖、怒りなどの苦悩なのであり、愛とは全くもって相容れないものだけから成り立っているのです。それがこの現実というものだとはっきり認識することです。愛を模倣した偽物の愛もあるのですが、それに騙されてこの現実が幸せだと勘違いしてしまっている人ほど、エゴの策略から逃れることが難しくなっているのです。

 セラピーにいらっしゃるクライアントさんというのは、明らかに幸せではないからこそセッションを受けに来られるのですから、そういう方々こそエゴの幻想から逃れる大きなチャンスを持っているとも言えるのです。幸せではないということは、何らかの苦悩を感じて生活しているということです。人の苦悩というのは、肉体的な苦悩と精神的な苦悩から成っています。

 そのどちらか、あるいは双方ともに問題を抱えているということは、エゴの罠に深く嵌った状態で生きているわけです。それを何とか改善したいとしてセラピーを受けるわけです。セラピーを繰り返していくと、確かに肉体的な苦悩、そして精神的な苦悩から徐々に開放されていくようになります。ところが、その両方の苦悩が減っていくにつれて、また別の苦悩が出現してきてしまうのです。

 これは実存の苦悩とでも言えばいいのでしょうか。つまり、ただ生きている苦悩、このエゴの幻想の中で生きている苦悩そのものに気づいてしまうということです。実は、このエゴの心の奥に隠し持っている分離からくる苦悩を分からなくするために、肉体的な苦悩と精神的な苦悩が目隠しとして作られたわけです。したがって、同じセラピーの方法を続けていても、なかなかこの実存という本質的な苦悩を解決して行けるわけではないのです。

 ここでは、はっきりとこのエゴが作った非現実の世界、つまり地獄の中にいる限り苦悩の連続でしかないと気づくことです。この世界で自分は幸せだと思っている人は、この奥深いエゴの苦悩に気がつかないようにして生きているに過ぎないということです。この世で嬉しいこと、楽しいこと、感動することがないわけではありませんが、それは地獄の中でほんのひとときその苦しさを忘れる瞬間があるというだけなのです。

 私たちはどんな悪夢にうなされていようと、いずれは夢から覚めてああ怖い夢だったと現実に戻ることができるのですが、それと同じように、このエゴの作った幻想という悪夢の中からいずれは誰もが覚醒して、無限の愛の中に溶けて一体になっていくことができます。しかし、できるだけ早く覚醒することで、このうっとうしい地獄から抜けて自分本来の愛の姿に戻りたいとは思わないでしょうか?

 もし、覚醒までの時間を短縮したいのであれば、現実という幻想の中でなるべく多くの愛の体験を自分にさせてあげる必要があるのです。この何もかもがでっちあげられた世界の中で、唯一意味のあるのが愛だからです。愛は裁かない、攻撃しない、過去も未来もないとする心です。過去があるとすれば、そこには罪というものが発生してきます。未来があると思うことで不安な気持ちが出てきてしまうのです。

 罪がなければ、すべてを赦すことになりますし、不安がなければ平安な気持ちで過ごすことができるようになります。愛は一体感であり、与えるものであり、無私になることです。エゴの自分をできるだけ使わないようにすることによって、必然的に愛の方向に向かせることができます。そういったことを続けていくと、少しずつエゴのチャンネルから愛、つまりハイアーセルフのチャンネルと波長が合うようになっていきます。

 実はハイアーセルフは太古の昔から一貫して、自分は夢の中にいるのだから早く目を覚ましなさいと呼び続けてくれているのですが、愛とは無関係な極悪な地獄の中で翻弄されてる自分には、その愛の呼びかけは聴こえなかったのです。ハイアーセルフの波長と合うようになるにしたがって、その声が聞こえてくるようになるはずです。

 声が聞こえるというのは一つの比喩であるかもしれません。実際には何かそういう気づきが心の奥からやってくる体験をしたり、今あなたが読んでいるこういった文章にであったり、誰かと会ってこのような情報を聞く機会が増えたりというような体験としてやってくることもあるかもしれません。そういった体験が増えれば増えるほど、覚醒への道のりを突き進んでいるということです。

 ただ漫然とエゴを発動させて、この世界で生きていくことを何千年続けていっても、そこには永遠に続くと思われる地獄が横たわっているだけなのです。きっと私たちはすでにいやというほどの数の人生を何度も繰り返して、エゴの人生を続けてきてしまったのです。一人ひとりがそのことに気づいて、本当の自分に戻ることを決意していくことが、全体としてものすごく大きな救いとなって行くのだと思います。



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