私たちは、全員がそれぞれの夢の中にいます。現実という夢です。その夢の中で、あなたは一人の人間として生きているというわけです。
その夢はいつ始まったかというと、人にもよるのですが、大抵は2~3歳くらいの頃から始まりました。ある日突然始まる人もいるだろうし、徐々にやんわりとスタートした人もいるでしょうね。
その日を憶えている人さえいるくらいです。その場合には、大変なショックだろうことは想像に難くありません。
なぜなら、突然自分という個人が出現してしまうのですから。その環境が重苦しく、劣悪なものであればあるほど、いきなり地獄へ突き落とされたと感じるはずです。
ほんの数年前まで、お母さんのお腹の中でゆったりとした理想的な状態でいたものが、何の責任もなくただ最適な環境の中でたゆたっていたはずなのに…。
それなのに、急に自分というちっぽけな存在が現れて、毎日を戸惑いながら、どうすれば安心できるのかを考えながら、自分の居場所がないままに生きていかねばならなくなったのです。
人によっては、自分は大切に育てられたし、素晴らしい家族に恵まれて、これが夢であったならいい夢だと思っているかもしれませんね。
けれども、本当はどんな環境であれ、個人としての自分がいるということは大変な重荷であり、孤独から逃れる真の術はありません。
ただ一つの救いは、自分がいるというのはいかにもリアルっぽいのですが、それが単なる思い込みであり、真実とは程遠い夢だったと気づくことなのです。
それ以外には、どんな救いもありません。この夢の世界でどれだけ活躍しようと、どんなに自分は満たされていると慰めようと、それが悪夢であることには違いないのですから。
そろそろ夢から目覚めることにしませんか?え、いやだって?それが私たち夢の中の住人の本心なのです。なぜなら、夢から醒めたなら私たちは消滅してしまうからです。
でも、安心して下さい。あなたが夢から醒めたときに、消えたあなたの代わりに本当のあなたが、決して死ぬことのないあなたが顕われるだけですから。