私たちは、何か印象深いことが起きると、それを心の中に刻みつけてしまうのです。そのときの自分の気持ちや感情などと一緒に記憶システムの中へと入れるのです。
それが嬉しい事柄であれば、折に触れて思い出しては、当時のことを再体験することで、繰り返し嬉しい思いをかみしめるのです。
逆に、怖いことだったり、辛い体験であれば、なるべく思い出さないようにするのですが、ふとしたときに勝手に思い出されては、何度も辛い思いをするといったこともあるかもしれません。
ネガティブなことを思い出すのは、見ないようにしたその時の感情を味わって、解決しようとする心の働きだと思って間違いありません。それは、自動的な癒しの作業と言ってもいいのです。
一方、嬉しいことを思い出すのは、癒しの効果よりも欲望が原動力なのです。今この瞬間が満ち足りていないからこそ、過去の嬉しい印象を担ぎ出して、自分を満たそうとするのです。
けれども、このマインドの働きは苦しみの原因となるのです。今はもうなくなってしまった、あの嬉しい体験をもう一度味わいたいと願うわけです。
そして、願い通りにはいかないのが現実なので、そこで苦悩することになるのです。辛い体験であれ、嬉しい体験であれ、その瞬間に完全に消化してしまえば、それはもう印象には残らないのです。
その結果、常に今この瞬間に意識を向けていられるようになるのです。何であれ、印象に残さないような生き方ができるなら、それこそ人生の達人になれますね。