この世界には、必ず相反する二つのものが存在します。それらのペアは、どちらが優れているかどうかを決められないものが大多数を占めています。
例えば、高低、熱冷、左右、前後、上下、過去未来、長短など無数にあります。けれども、誰が見てもそこに優劣をつけてしまいたくなるものもあります。
プラスとマイナス、肯定と否定、善悪、正不正、快不快、好き嫌いなどです。そして私たちは都合のいい方ばかりを手に入れようとしてしまうのです。
勿論、不快な環境よりも快適さを求めるのは、人間を含めたあらゆる動物の生存本能からくる、当然のことと言ってもいいでしょう。
けれども、人間だけがそこに本能を飛び越えて強く執着してしまうのです。否定的な自分や環境から逃避して、出来る限り肯定的な環境や自分を手に入れようとします。
しかし、この世界はプラスがあるだけマイナスもあるのです。肯定的な感情がある分だけ否定的な感情も湧くことになるのです。
これがこの世界の法則です。マイナスを避けて、プラスにばかり近づこうとすると、実は深刻な弊害が起こってしまいます。
せっかく状況がマイナスからプラスへとシフトしても、プラスを心から歓迎して喜ぶことができなくなってしまうのです。
それは、状況がマイナスだったときを十分に体験せずにいたために、それがプラスの状況に変わったあとも、内面的に追ってくるからです。
そして今度は逆に、プラスからマイナスへと状況がシフトしたときに、プラスを充分堪能していない分だけ、マイナスへとシフトしてしまったショックが大きくなるのです。
結局、プラスへの執着とマイナスからの逃避の人生は、状況がどちらにシフトしても深く人生を生きている気がしなくなってしまうのです。
人生は絶えず揺れ動く振り子です。プラスが来れば、次にマイナスに変わるのです。事象そのものは一時的に停滞しているように見えても、必ずいずれは反対側へと振れるのです。
本当に停滞してしまうとしたら、それは自分の心の中にあるプラスへの欲望と執着、そしてマイナスからの逃避、この生き方こそが心理的な停滞を引き起こす元凶だと知ることです。