セラピストの役割とは、クライアントさん自身が逃亡生活を送り続けていることに気づくように仕向けることだと言えます。
一体何からの逃亡かと言えば、ご本人にとって非常に都合の悪いもの、惨めな自分の姿だったり、それを体験した時の恐怖だったりするのです。
誰もがそういった決して向き合いたくないと思っている感情から、遮二無二逃げ切ろうとしているのですが、大抵はそのことに気づいてもいないのです。
自分が逃げ回る人生を送っているなどとは思ってもいないので、逃げることをやめることができなくなってしまっているのです。
だからまずは気づく事こそが是非とも必要なのです。自分一人で気づけないからこそ、他の誰かのサポートが必要となりますね。
そこでセラピストの出番なわけですが、残念ながらセラピストはご本人が何か困った事を抱えていなければ、お会いすることさえできません。
そのために、クライアントさんは、自分が逃げている事に気づくために、困った現実を起こしてセラピストのところへやって来ることになるのです。
そしてもう一つの方法を使う場合もあるのです。自分の人生ではなくて、みじかなご家族などの問題を利用して、セラピストのところにやってくる方法です。
後者の場合、ご本人にはそうした自覚は全くないのが普通です。問題は自分ではなくて家族の誰かだと信じ切っているのですから。
そして確かにそのご家族の方にも同様な逃避の問題があるのも事実なので、その方のセラピーも行っていくのですが、その途中で当の本人の逃避にも気づきがやってくることになります。
セラピストは、時には憎まれ役を演じなければならないかもしれません。なぜなら、逃避に気づくためには本人を追い込まねばならないからです。
クライアントさんは、嫌なことばかりを見せつけられるので、セラピストを避けるようにさえなるものです。そして、それもずっとやってきた逃避生活と同じことなのです。
そして、逃避に気づくことさえできれば、今度はその逃避をやめるという選択肢があるということに気づくことができるのです。
そうなったら、あとは本人が逃げも隠れもしないという決意をすることです。傷つくことを厭わないという決意がそこにあれば、まったく新しい自由な人生が待っています。