物語を100倍楽しむ方法

私たちは、対人関係の中で様々な役割を同時に担っています。たとえば、娘であると同時に母親であり、またそれと同時に妻であるという具合にです。

家庭の中だけではなくて、社会に出ればそれなりの社会人としての顔もするわけですし、そのようにいくつもの役割、顔を同時に持っているのは当然のことです。

それらの互いに重複する役割、あるいは顔というのは、何も矛盾するものではありません。けれども、それは物語の中での話しです。

より真実に近づけば近づくほど、心の中で互いに矛盾してしまうような感覚を同時に感じるということが起きてきてしまうのです。

個人であると同時に、個人ではないとか、一人の人物であるとも言えるし、また同時に誰でもないということも分かっている。

心を癒す必要があるというのは本当だけれど、本質的には心を癒していってもエゴがいなくなることはないということだとか。

現実から逃げることなく、自律したなにものにも捉われない自由な意志によって、自らの人生を切り開いていくべき、と同時に本質的には私たちには自由意志などないということだとか。

こうしたまったく互いに矛盾するようなことが同時に心のなかに起きてしまうのは、物語の中で活躍する自分と、本質としての自己を同時に感じることがその理由なのです。

そしてもっと言えば、このことを矛盾と感じているのは物語の中の自分であって、本質の自己からすれば、何の矛盾もないとしかいいようがないのです。

こうした不思議な感覚を常に感じ続けていると、今までよりももっと明確にこの世界を物語として見る目が養われていくように思います。

それは、物語を100倍楽しむ唯一の方法といってもいいのかもしれませんね。

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