頑なな心

子供のころ、自分はあまり親の言うことを聞かない子供でした。それも変なところで意地を張ってしまい、損をするということが日常的にあったと思います。

あるときに、家族で海にでかけたのですが、3歳くらいの自分は絶対に海に入らないと頑張っていたことがありました。はっきりとは理由は覚えてないのですが、何となくいやな感じがしたという程度だったと思います。

いよいよ夕方になって、周りにいた人達が帰っていくなかで、まだ海には入らないと一人抵抗していたと思います。ほとんど人がいなくなったときに、やっと海の中に身体を沈めてみたらそれがとても冷たくて火照った身体に気持ちがよかったのです。

さあそうなると、今度は親がそろそろ暗くなってきたから帰ろうといっても、海からあがろうとしなくなるというへそ曲がりだったのです。

それだったら最初から素直に入っておけば長い時間楽しめたはずなのにと思うのですが、そこは変わった融通の効かない仕方ない子だったのです。

また激しい偏食でほとんど何も食べることができなかった子供時代に、母親が心配して「これおいしいから、騙されたと思って食べてみて」と促すことがよくありました。

それを聞くと、自分は騙されたくないと強がるだけで、絶対に口にしようとはしませんでした。それで、食べ物に関しては途方もなく母親は苦労をしたと記憶しています。

唯一食べられるカレーの中ににんじんを摩り下ろして秘密に混ぜてみたり、そういうことで何とか野菜を食べてきたのだと思います。

こうした頑固な性格であったにもかかわらず、親は何も強制することもなかったので自分は常に自由でいられました。このことは今となっては本当に感謝せずにはいられません。

そして、クライアントさんとのセッションにおいて、自分がどれほどアドバイスをしたところで頑なにそれを拒むクライアントさんを目の前にして、かつての幼い頑固な自分を思い出すのです。

ああ、自分もいやなものはいやだと拒んできたなと。それでいいんだと。否定したり、強制するものではないということを思い出すことができます。

時期がきたら、きっと自然とその頑なさゆえに拒む気持ちは和らいで、あれほどいやだと思っていたことでも気づくとできるようになっていたりするものです。

いやなことはいやだと、できないことはできないとはっきりと主張していいということです。それを認めることが実はとても大切な癒しに繋がることなのですから。