どんな物語も実在しない

物語というと、日本昔話のような童話や平家物語、あるいはテレビドラマや映画のように何となく架空のストーリーをイメージさせる感じがしますね。

けれども、大きくとらえれば、宇宙の歴史、地球の歴史、人類の歴史だって物語とも言えるわけです。私たち一人ひとりの人生にしても、正真正銘の物語なのです。

そのようにして、この世界はすべて物語で出来上がっているとも言えるのです。さて、その溢れかえる物語のどれもが、実在しないものだとしたらどうでしょう?

実はどんな物語であろうと、それは決して実在するものではありません。私たちの思考の中に繰り広げられているに過ぎないからです。

ひとたび思考から脱するなら、そこにはどんな物語も見出すことは不可能なことなのです。このことの気づきは、とても大切だと思います。

今日、あなたは職場に行って仕事をして、夜に友達と夕食を共にしてから帰宅したとします。こうした記憶に残っている一連の流れのことを、物語と呼ぶのですから実在すると感じます。

ところが、思考を使って過去の記憶にアクセスすることをストップし、たった今この瞬間に強烈に意識を向けることができるなら、そこにはどんな物語も存在しないと気づくはずなのです。

私たちが「事実」と呼んでいるものと、実在とは残念ながら一致しないということです。実在は時間との関わりが全くありません。それは瞬間であり、同時に永遠だから。

どんな物語性も排除してこの世界を見ることができるとき、騒音でごった返していた我々のマインドは、静寂そのものとなるのでしょうね。