本当に見つめると消えてしまう

今月に入って、急激に冷え込んで来ましたね。寒いのは苦手なのですが、冬のキーンと冷えた夜空は、空気が澄んでいて星見には最適なのです。

星はシリウスのようにとても明るいものから、肉眼でやっと認識できる程度の暗い星までいろいろな明るさがあって、等級という単位で表されているのはご存知かと思います。

自分の視力で、ようやく見えるような明るさの星があるとき、その星にピントを合わせて視野の中心で見ようとすると、かえって見えなくなってしまうという経験をされたことがあるはずです。

逆に少しだけその星から視点をずらしてやると、見えるようになるのです。この現象は、人間の目の特徴によるもので、ちゃんとした理由があるのです。

簡単に言ってしまうと、視野中心から離れた周辺視野では、視野の中心に比べて細かい認識をする必要がなく、視野中心とは別の「少ない光を感知しやすい」という特性を持った細胞が集まっているのです。

その結果、視野中心よりも周辺視野の方がより暗い光を感知することができるわけです。凝視しようとすればするほど、暗いものは見えなくなるので、ちょっといやな感覚ですね。

この話しとよく似た現象があるのですが、それは都合の悪いことから目を背ければ背けるほど、それは苦しみとなって迫ってくるということです。

そして逆に、目を背けることなく真正面からしっかり見ることができると、それは不思議なことに消えてしまうのです。

台風の中心からはずれたところはひどい暴風雨なのに、台風の目と呼ばれる中心は無風状態だったりするのとも、どこか似ているかもしれません。

いずれにせよ、感情というものは、本当にそれと一つになってしまうことができたら、そこには何もなかったということを知る体験をすることになるのです。

幻想は、真正面から見てあげると、無に帰するということと同じことなのかもしれません。