幼いときに、自分の現実としての幼さと、自分の大人っぽい感覚とのずれを感じて、どうしようもない惨めさに飲み込まれていた人たちがいます。
それも時々いらっしゃいます。どういう人の場合にそういうことが起きるのかは定かではないのですが、思った以上に多くの事例に出会います。
たとえば、子供のころに「何で自分はこんなに小さいんだろう?」と不自然に自分自身を感じていたり、もっと明確に「私は子供じゃない!」と心の中で叫んでいたりもするのです。
肉体だけは、どうやってもほぼ実年齢に相応の育ち方をするのですが、心というのはどうもその限りではないようですね。
勿論、大人のような実体験が豊富ではないわけですから、物知りというわけではありませんが、要するに誰にも教わったわけではないのに人の心の在り方などを知っているのです。
この人にこういうことを言ったら傷つけることになるとか、この人に我侭をしたら相手がもたないなど、生まれながらに分かっているのです。
こういう子供は、周りの無邪気な子供たちと一緒にいてもあまり楽しめなかったりします。それはそうですよね、その子はもっと大人っぽい洗練されたものなどに興味があるのですから。
こうしたケースで一番困るのは、自分が思ったような自分にいつまでたってもなれないという現実をつきつけられて、自己否定を強く持ってしまうということです。
単に早熟というレベルで済ませるようなものではないので、本人は人知れず悩んだりすることになる場合も多いようです。
どこかの年齢になれば、実年齢が精神年齢にキャッチアップすることになるのでいつまでもその問題が続くということはないのですが、その自己否定感だけが残ってしまうのです。
それと同時に、子供のころから大人っぽい気の使い方をして生きてきてしまうために、感情が鬱積してしまい、後々そうしたものが噴出して本人を驚かせることにもつながるのです。
思い当たるという場合には、自分の心の奥深くに隠してしまった無邪気さを是非探してみてください。そこと出会うことができたなら、無邪気さと大人っぽさのバランスのとれた成熟した人間へと歩みを進めていけるはずです。