自己同化をはずす

グルジェフは、もしも人間に罪というものがあるとするなら、それは自己同化だと言ったそうです。これは本当に人間の内面について、熟知した人の言葉だというのが分かるというものです。

夢の中の自分は、その夢の中でこれが夢だとは気づかないのが普通ですね。どんな内容の夢であろうと、それを真に受けてしまっているのです。

怖い夢に汗びっしょりになることもあるだろうし、夢の中の出来事に悩まされて深刻になっていることもありますね。なぜ夢を夢と認識できないかというと、自分と夢を同化しているからです。

朝目覚めて、その夢と自分との間に距離ができたときに、やっとなんだ夢だったのかと気づくわけです。夢の余韻はしばらく残るかもしれませんが、いずれは忘れていくのです。

私たちの誰もが、自分の本質をこの身体とマインドに同化してしまっているのです。それを自我(エゴ)と呼ぶのですが、その自己同化によってあらゆる苦しみが発生しているのです。

夢を夢と見破るためには、その夢との同化をはずせばよかったのと同じように、身体およびマインドとの同化を見破って、非同化することができれば、あなたの人生を完全な物語として見ることができるようになるのです。

その時に初めて、この現実世界は夢のようなものだったと気づくのです。現実が幻想だと言っているのではありません。現実は勿論夢ではありません。

けれども、同化をはずすことで現実を夢と同じように単なる物語として「見る」ことができるということです。そして、同化をはずすための唯一の方法こそが、「見ていること」なのです。

ただひたすら自分を見ていることによって、身体そしてマインドとの間にすき間ができるようになるのです。その距離が自己同化をはずすことに繋がるということです。