印象を持ち歩かない

かつて、ひっかけクイズの定番となっていたものの中に、相手に「ピザ」と10回言わせた後で、ではこれは?と言って肘を指さすと、相手は「ヒザ」と言ってしまうというのがありましたね。

大抵の人は一度はやられて引っかかった経験があると思います。つい先ほど見たテレビ番組の中で、生まれて初めてそのひっかけクイズを出されたら、必ず引っかかってしまうという検証をしていたのです。

バラエティ番組ですから、笑いながら見ていればいいのですが、ちょっとドキッとさせられてしまったのです。最初にそのクイズの経験がない外国の人に対して検証すると、確かにみんな引っかかるのです。

同様にして、そのクイズを知らないご老人も全く同じようにして引っかかるのですが、なんと幼稚園児に対してやってみたところ、誰も引っかかる子供はいなかったのです。

当然、幼稚園児ですからまだ一度もそのクイズを経験したことはないにも関わらず、幼い口調で「ピザ」を繰り返したあと、冷静に「ひじ」と言えたのです。

番組ではその検証がまったくできなかったことがやり玉にあげられるだけで、なぜ幼児は我々大人のように引っかからないのかを疑問視していませんでした。

これは、幼い子供のうちはまだ思考に振り回される度合いが小さいということの証しなのですね。自我が未発達な分だけ、思考もまだ緩慢のです。

だから、彼らは起きていることだけに集中して、それが終わった瞬間に捨てることができるということです。何かの印象を持ち歩くのは、思考による防衛の結果なのです。

無防備な幼い子供だから、瞬間瞬間をまさに生きているために、「ではここは?」と問われたときに、それまでのことがしっかりクリアされて、邪魔されることなく「ひじ」と言えたのです。

瞬間瞬間の印象を捨てていく注意深さを身につける練習をすれば、幼稚園児のように正確に返事ができるだけでなく、思考を小さくして意識的に生きることができるようになるということですね。