小学生のあるとき、昨日までと何かが違う、何かの感覚がなくなってしまったような感じになったことがありました。
もう少し具体的に言えば、視界にモヤのようなものがかかったような感じが、リアルな感じがしなくなったのです。
そしてそれはそれ以来ずっと変わらずに今も続いています。もうあのリアルな感覚を取り戻すことはできないのかと思うと、ちょっと残念な気がします。
ある種夢の中で生きているような、現実感が乏しくなったような、そんなフワッとした感じで生きているのです。
けれども、そのおかげと言ってはなんですが、この世界が夢のようなものに違いないと思うようになったのですね。
夢と現実との違いは何かと考えてみると、究極的には何の違いもないということに気づくことができます。
夢の特徴はと言うと、目が覚めれば跡形もなく消えてしまうもの。であれば、現実も同様に人生が終わってしまえば跡形もなく消えてしまうのです。
夢の中であなたが極悪人で罪深い行いをしたとしても、目覚めた時にはああ夢で良かったとホッとするのです。
一方の現実ではどうなのかというと、あなたがどれほどの罪深い人間であったとしても、人生が終われば消えてしまうはず。
たとえそれを覚えていた人がいたとしても、100年、1000年、100万年経てば、同じことです。数十億年経てば、そもそも太陽系が消滅します。
そして実は、人生が終わらなくても思考から脱出することができたら、人生という物語は消えてしまうのです。
その時には、本当にリアルな実在だけが在るのですね。