記憶

記憶力というのは、人によって良かったり、それほどでもなかったりと様々ですね。概して、我々は記憶力のいい人は頭のいい人というように結び付けて考えるものです。

学校の勉強にしても、物覚えがよければそれだけ少ない勉強時間で効率的に成果をあげることができるわけですから、記憶力の優れた人は羨ましいなあと思ったことのある人は多いでしょうね。

記憶力とは、文字通り記憶する力、能力のことを指します。記憶というのは、一度見たもの、聞いたもの、感じたもの、その他あらゆる体験した事柄をそのまま覚えた情報であり、それを使ってイメージの中や文字や言葉として再現することができるわけです。

ニワトリは3歩歩くと忘れるとよく言われますね。それは時々記憶力の乏しい人のことの比喩としても使われますが、ニワトリの立場としては何とも不名誉な言われようですね。

しかし、3歩歩くと何でも忘れるニワトリと、それよりもう少し記憶力のいい我々ではどちらが幸せなんだろうと考えたことはあるでしょうか。

実は私たちの苦悩のほとんどは記憶がベースになっています。つまり、過去に体験した記憶が基となって自分自身を苦しめることになってしまっているのです。

今この瞬間に過去はもう現実ではないということは、誰でも分かっていることなのですが、そんなはかない過去の記憶に捉われ続けて苦しんでいるのが私たちなのです。

通常の心理療法で深く掘り下げて行くのは、いつも幼い頃の心の傷と言われる、過去の辛い記憶なわけです。実際そういった癒しを進めていくのには、思い出したくないような記憶としっかり向き合う必要があるため、人によっては催眠で辛い記憶を消して欲しいと訴えてくる場合もあるくらいです。

これは人間だけでなく、頭のいい動物の場合にも当てはまるのです。象の密猟が流行っていた頃、親の象を目の前で殺された子供の象は、それがトラウマとなって保護された先でもミルクを飲まないで、死に瀕する場合もあると聞いたことがあります。

しかしだからと言って、本当に3歩歩いたら全てを忘れてしまうくらいの貧弱な記憶力しかなかったら、私たちはこの世界で普通に暮らして行くことは難しくなってしまいますね。

つづく