過去への不満と未来への期待

人物としての自分は、間違いなく過去にしっかりと根ざして生きています。過去のさまざまな体験などを寄せ集めて、自分という人物像を作ったのですから。

この自分とは、まさしく過去から出来上がっているということです。そして、その過去が輝かしいもので埋め尽くされていれば、深い満足感を持つこともできるのかもしれません。

ところが、ほとんどの人は過去に多くの不満を持って生きてきたのです。幼い頃に言いたいことが伝えられなくて、親に誤解されてしまった悔しさ。

伝えることはできたのだけど、自分の気持ちを受け止めてはもらえなかった苦しみ。そのほかにも、沢山の満たされない感が過去には溢れています。

それを土台として今の自分がいるわけです。したがって、その不満をどのようにして解消するべきか、私たちは日夜考えているのです。

そして、もしもその不満が今日解消されていなければ、それは未来にこそ解消するチャンスがあると思うわけです。

それが未来に対する期待となるのです。ですが、どうして過去の不満を未来に解消することができるというのでしょうか?

過去はもう二度と戻って来ないという事を知っているはずなのに。それでも私たちは何とかして、過去の満たされていない気持ちを未来に何とかできると思いたいのです。

そうやって、不可能なことに自分の人生を賭けてしまうのです。これはとても不毛なことだと気づかなければなりません。

本当は過去も未来も、自分を満ち足りた気持ちにさせることはできません。どちらでもない、大切な今に意識を向け続けることです。

それを抜きにして、他に心の平安を見出す場所はないということを明確に認めることです。今は過去と未来の間にあるのではありません。それは、永遠を意味するからです。