自己否定と自己肯定

一般的に言って、誰の心の中にも、二つの相反する部分があります。一つは、自己否定であり、もう一つは自己肯定の部分です。

どちらか片方だけしか持っていないという人はいないはずです。どちらが先に出来上がるかというと、それは間違いなく自己否定の方です。

生まれたばかりの時には、否定も肯定も両方ともありませんでした。ところが、2~3歳になる頃までには、自己否定感の根っこのようなものがもうすでに出来上がるのです。

その理由はいろいろあるかもしれません。直接的に大人から否定されるということもあるでしょうし、生きづらくて、苦しい環境を自分のせいにしてしまうということもあるでしょう。

どんな理由にしても、本質的には理不尽としか言いようがないのですが、とにかく幼い子供というのは、自分に対して駄目出しをしてしまうのです。

けれども、そのままの状態で生きていくのはとてもシンドイために、その逆の自分は駄目じゃないというものを、何とかして作ろうと頑張るのです。

それが向上心と言われるものの原動力になるわけです。もっと頑張ることで、今よりもより価値ある自分になろうとするのです。

目指すは、自己肯定感です。それをなるべく多く手に入れたいばっかりに、努力や我慢を惜しまなくなるのです。

そのことが悪いということはありません。問題は、自己否定があまりに強烈過ぎると、その反発としての自己肯定感を求めるパワーが強大となり、そこに激しい葛藤が発生してしまうことです。

そうなると、自己肯定を欲する側がある程度頑張ると、自己否定側がそれを撃ち落してしまうのです。そして、その人はしばらく低迷を続けることになります。

そしてまた、力が復活すると、あくなき頑張りが続くことになり、それがある程度続くと、再び撃ち落されるということが、人生において延々と繰り返されることになります。

もしも、これを読んで心当たりがあると思われるのでしたら、まず自分はなぜそれほどまでに一生懸命になるのかを、よく見ることです。

そしてその原動力となる自己否定感を勇気を持って、これまた見ることです。それを何とかしようとせずに、ただただ観続けることです。

そうやって、少しずつ葛藤の元が小さくなっていくことによって、のこぎりの歯のようなアップダウンの繰り返しのような人生が、穏やかなものとなっていくはずです。