催眠下での抵抗

人の心には表面意識と潜在意識の間を仕切っている膜のようなものがあると言われています。それをクリティカルファクターと呼ぶことがあるそうです。

それによって、心の奥に抑圧したものを普段自覚しないで済むようになっているわけです。これは都合の悪い自分の本音や感情を感じないでいられるようにするためには有効なのです。

しかし、本当の自分と向き合おうとするときには、そのクリティカルファクターの存在が逆に邪魔をしてしまうわけです。

通常催眠状態になると、そのクリティカルファクターが緩んだ状態となるため、潜在意識の中に隠されていたものが緩んだ隙間から漏れ出てくるようになります。

そのため、手付かずだった潜在意識の中の本当の自分と対面しようとする時に、催眠状態になることが有効になる場合があるのですね。

そうした期待を込めて催眠療法を行なうのですが、逆に何も思い出すこともできなくなってしまうことが時々あるのです。

カウンセリングの時には、過去の出来事をいくつか思い出していただいて、そのエピソードについてご一緒に見ていくことをするのです。

ごく普通の意識状態では思い出すことができていたのに、催眠状態になった途端に頭の中が真っ暗になってしまって、何も思い出すことができなくなってしまうのです。

これは都合の悪いことを思い出したくないという防衛によって、心のシャッターを閉めてしまうということが無自覚のうちに起きたわけです。

隠しておきたいと思っている意識にとって、催眠状態そのものが危険だと感じ取ってしまうことによって起きるものだと思っています。

こうした場合でも、何度か繰り返し催眠状態を経験していくうちに、次第に抵抗が小さくなっていき、結果として心のひだに隠された大切な本音や感情に気づくことができるようになるのです。