「無」とゼロは違う

仏教や禅で言うところの「無」というのは、決してゼロのことではありません。数字のゼロは、0+5=5 のようにして何かを足したり、引いたりすることができますね。

けれども「無」はそのようなものではないのです。足し引きができるのは、この現象界の中においてなのですが、「無」というのはその現象が起きて来る源なのです。

「無」という源は、どこまでも変わることがありません。「無」がキャンパスだとすれば、その上に描かれた絵がこの世界のような現象界だとすればいいのです。

キャンパスの上にどんな絵を描こうと、キャンパスがキャンパスでなくなることはないのです。仮に、キャンパスの絵を描いたとしてもそのキャンパスは本物ではありません。

数字のゼロは、そうした絵で描かれたキャンパスだと思えばいいのです。これで、「無」とゼロの違いがつかめたのではないでしょうか。

ゼロは思考の中のイメージに過ぎず、「無」は思考をはるかに超えた真実として在るもの、そこからすべてがやってくる源なのですね。