かつて日本に輸入されて、日本で独自の花を咲かせた「禅」というものがありますね。その禅僧として最も有名な一人が、道元です。
彼はずば抜けて聡明な子供だったらしいのですが、実は二歳の時に父親が亡くなり、七歳の時には母親が亡くなったのです。
そんな状況にも関わらず、彼は心の奥で「これは好機だ、もはや障害は何もない」と思ったのだとか。
「両親二人は私を愛し、私は彼らを愛した。それこそが危険だったのだ。二人ともちょうど良い時に死んだ。」
「二人は私を破壊することなく、ちょうど良い時に死んだことに、私はこの上なく感謝している」
たった七歳の子供がこんなことを理解できるなんて、とても不思議なことではあるのですが…。
けれども、誤解を恐れずに言えば、人間の最大の障害は父親であり、母親であるという事実を踏まえれば、彼は冷静な判断をしていたのです。
彼は親からやってくる期待を裏切る心配をする必要がなくなったことに安堵して、その後の人生を全く自由に生きることができたのですね。
それが彼を覚醒させたと言ってもいいのかもしれません。こうしたことを知ると、やはり癒しというのはこれまで培ってきたものを捨てていく作業だということがよく理解できますね。