心理的恐怖とは何かと言えば、それは自らが作り出した恐怖のことです。自分で恐怖を作り出すなんてあり得ないと思うかもしれませんが、そうでもないのです。
私たちは、実際には在りもしないことを自分ででっちあげて、それに対してまさしく恐怖を抱くということを繰り返しているのです。
その中でも一番単純なのが、予期不安というものです。生物の防衛本能として、一度危険な体験をすると、同様の体験を避けようとする力が働くのです。
そうすると、実際には危険がそこになくても、そこに危険の可能性を検知することで、それを避けようとしてしまうということです。
勿論、それは単なる危険回避の行動ですから、いけないことではないのですが、それが繰り返されてしまうと、過度でしかも不要な自己防衛をし続けることになるのです。
パニック発作などはその典型的なものだと言えます。最初に具合が悪くなったのは、体調不良などが重なったための正当なものだったのが、次からは単なる危険回避による予期不安からの発作が起こるのです。
昔から言われていることですが、暗闇の中でロープを見た時、恐怖の心でそれを見ることで、蛇のように見えてしまうために、その心の通りに恐怖を感じてしまうのです。
動物には、こうした心理的恐怖というのはあまりないのかもしれませんが、人間はこれでもかというくらいに日々の生活の中でありもしない恐怖をでっちあげているのです。
それは本当に大変なエネルギーの浪費です。一度恐れを抱いた対象からは、できるだけ逃れようとしてしまうので、恐怖が自分の中で大きく育ってしまうのです。
逃げれば逃げるほど、恐怖は肥大していき、仕舞いには飽和状態にまで成長した状態で、本人を追いかけてくるのです。
そうなると、その恐怖に向かい合うことは至難の業となってしまいます。それでも方法はあります。つまり、こうした心理的な働きのことを理解した上で、勇気を持ってその恐怖から逃れようとすることをやめるのです。
逃げるのをやめただけで、不思議なことにその恐怖はそれほど大きくはなかったということに気づくことになるのです。
自分で作り上げた恐怖ですから、それに実体などありません。だからこそ、見てしまえばそれは急速に萎んでいってしまうのです。
あなたには、自分が逃げ続けてきた恐怖の本性を見ようとする勇気があるでしょうか?対決姿勢を手放せば、きっと恐怖は影のように消えてしまうはずです。