恐怖が先か、逃避が先か

ライオンに追われたシマウマは、当然のごとく命をかけて逃げ回ります。それは、すべての動物が持っている自己防衛本能が発動するからですね。

勿論そのことは、人間であっても変わりありません。自分の命を守るために、危険を察知して、恐怖という感情を用いてその危険から逃げようとするのです。

こうした本能的な行動というのは、初めに危険による恐怖がきて、その結果として逃げるという行為が起こるのです。

ところが、人間だけがそうした恐怖を何倍にも膨らませて、実際には命の危険には至らないということが明白なのにも係わらず、逃げ続けるのです。

それは言わば精神的な恐怖と表現することができます。そしてそうした実体の伴わない恐怖というのは、自ら作り出しているということに気づくことが出来ません。

なぜなら、その恐怖とは、精神的な逃避によって自動的に作られてしまうものだからです。こうなると、恐怖が先にあるのか、それとも逃避が先なのかがはっきりしなくなってしまうのです。

逃げる心が恐怖心を生み出し、その恐怖から更に逃げようとするために、また恐怖が生み出されるという具合に、あっという間に恐怖と逃避の無限ループに陥ることになるのです。

そうなったら、もうその日を生きるエネルギーの大半をそのループをグルグル回ることだけに費やすことになってしまうでしょうね。

きっといつも疲労して、何もやる気が起きない状態になってしまうはずです。ウツ症状などもこうしたことが原因であると言うこともできます。

そこから撤退する方法はただ一つ、その悪循環にはまり込んでいることに気づくことです。そして、自分がこしらえた実体の伴わない恐怖から逃げなくすることです。

恐くても、恐くても逃げずに立ち止まり、そこにただいることです。たったそれだけでも、追ってきていた恐怖は、エネルギーを失うはずです。

とことんまで、その悪循環に嵌ってにっちもさっちもいかなくなった人は、自動的にそうした経験をしているはずです。

けれども、そこまで苦しむ必要などないのです。今この瞬間でも、逃げることをやめることは可能なのです。それを信頼して、実践することです。