防衛システムが怒りを抑えるケース

このブログでも何度か書いたことがあったと思うのですが、ストックホルム・シンドロームについてまた書いてみたいと思います。

今から数十年前にストックホルムで起きた銀行強盗事件において、犯人は一週間にもわたって人質をとって立てこもるということがあったのです。

その事件の間に、犯人の若い男性と人質の中の女性との間で結婚の約束をするという奇妙な事態があったのです。警察が武装して踏み込もうとしたときも、人質が警察を敵対視するということまであったそうです。

簡単に言ってしまえば、生きるか死ぬかの究極の精神状態においては、犯人を嫌っていては自分が生き残るためには非常に都合が悪いと、人質の女性の潜在意識の中にある自己防衛システムが判断したのです。

そのために、その女性は自分の防衛システムにコントロールされていることに気づかぬままに、犯人に対して愛情を感じるようになってしまったということです。

こうしたことは、シンドローム(症候群)と呼ばれるまでもなく、極限状態において私たちの心理的防衛システムがとる作戦としては十分に理解できることなのです。

このような極端な自己防衛が、一般家庭の中においても当然のごとく起きうることと言えます。幼い子供が不安の中で生き抜くということを考えた場合、親への絶対服従は死活問題なのです。

親に逆らうことが自分を危険へと落としめると思い込めば、子供は親を絶対視するでしょうし、自分の心に発生した親への怒りを必至に隠そうとするのです。

そうなれば、親への怒りはすべて気づかぬうちに心の奥底へと隠してしまいます。それが短い間であれば問題はないのですが、長い間には溜めこまれた怒りや不満が問題行動となって表面化することになるのです。

そうしなければ、心のバランスが崩れて大変なことになってしまうからです。私たちの自己防衛システムは非常に巧みに自分を安心させようとするのですが、それが仇となって長い間には様々な苦しみを生むことに繋がるのです。

成長段階において、親に対して怒りを感じたことがないという場合には、こうしたことを疑ってみる必要があります。もしも思い当たるという場合には、是非一度じっくりと過去をおさらいしてみることですね。