セッションでは、いつも「受け入れること」についてお話しをさせていただいています。それが、癒しの本質だからです。「癒し」という言葉の響きには、どことなく解毒のようなニュアンスが含まれていますね。
都合の悪いネガティブな感情を洗い流して、クリーンで清潔な心に戻す作業のような連想をされている方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、心の奥に溜め込んだ感情を逃げずにしっかり味わって、感情を解放するということが癒しにはどうしても必要なことであるのは間違いありません。
こうしたことは、癒しの初期の段階では必須のことだと言えます。だからこそ、催眠療法のような技法を使って、年齢退行のセッションをするのです。
けれども、そのような心理療法をいつまでもやり続けるわけにはいきませんし、どこかの時点ですべてが解放されて、ピッカピカの心を取り戻せるわけでもないのです。
人の心は常に不完全であって、否定的な部分がなくなってしまうなどということなど、どこまで行ってもないのですから。だからこそ、「受け入れること」が癒しの神髄なのです。
「受け入れること」は、とてもシンプルなのに、なかなか実践できないものです。それは、私たちは無自覚のうちに頭の中に浮かんできた思考に巻き込まれて生活しているからです。
やってきた思考は、すべて過去から到来したものです。それも、目的はただ一つ、自己防衛を続けることなのです。それが、自我の全貌です。
「受け入れること」がなぜ癒しの本質なのかというと、それだけが過去からやってきた思考に乗っ取られずにいる唯一の状態だからです。
「受け入れること」だけが、今この瞬間にいることを可能にさせてくれるのです。だからこそ、自我の中心である自己防衛システムは、強烈な力であなたをそこから離そうとするのです。
「受け入れる」とは、自分や誰かの行為ではなくてその存在を見ることです。存在に対しては、努力なしにただ「受け入れること」しかできないのですから。