気づかない症候群

よく風呂のカビ取り洗浄剤などに「混ぜるな危険」などの言葉が大きく書いてあるものがありますね。違う種類の塩素系の洗浄剤を混ぜると毒性のあるガスが発生したりすることがあるからです。

あれだけ大きく目立つようにその文字が表面に書いてあれば、不用意に混ぜてしまう危険を避けることができるはずですね。

それと同じように、「見るな、危険!」とか、「考えるな、危険!」のようなレッテルが貼ってあるところが私たちの周りには結構あるのです。それは一体誰が貼るのかというと、エゴなのです。

エゴは自分の存続にとって危険だとエゴ自身が判断したものに対して、そのような目立つレッテルを何食わぬ顔で貼っておくのです。それがエゴの防衛システムの機能なのです。

では、エゴはどんなものにそういったレッテルを貼るのでしょうか?それは例えば、思い出したら酷いことになってしまいそうな、過去の出来事の記憶や感情、あるいは、認めることができないような自分の現状や内外面。

そして、そういった自分に都合の悪いことを思い出させられそうな人からの言葉などです。そういった類のものには、ことごとく上記のようなレッテルが貼られてしまうのです。

その目立つレッテルのおかげで、私たちはほとんど無意識的にその部分から目をそらしたり気づかないようにしてしまうということです。

エゴはそうすることで自分を危険に晒さないように保護しているつもりになっているのですが、実はその前提として、自分は攻撃されうる、そして傷つけられる可能性があるという決め付けがあるのです。

それも実はエゴが作った見せ掛けのルールであり、そうやってエゴは自分を守るという大義名分を利用してエゴ自身を存続させようとし続けているのです。

でも実は、そういうところにこそ、幸せになっていく鍵が隠されているのです。つまり、エゴのレッテル貼りによって私たちはせっかく目の前に転がっている幸せに向かうための入り口を封印されてしまっているのです。

にっちもさっちも行かないと苦しんでいるクライアントさんを見ていると、本当に真っ暗な中でどこに出口を見出せばいいのか分からずに右往左往している様に見えるのですが、実はご本人のすぐ目の前に出口はちゃんとあるのです。

でもご本人にはその出口が全く見えないようなのです。その理由がエゴのレッテル貼りなのです。光への出口に「ここは危険」としっかり書かれているために、本人にはその出口があることに気づけなくなってしまっているのです。

セラピストの仕事というのは、ある意味でそういったレッテルが貼られている部分に気づいてもらうことなのですが、そのためのセラピストの言葉そのものにもそのレッテルが貼られてしまうために、効果がでない場合があります。

そうやって言葉が遮られてしまう場合には、催眠療法やヒーリングなどのように言葉に頼らないやり方、体験的手法によって、自然とレッテルが剥がれていってご自身の力でその部分と対峙することができるようになるのです。

そしてそういった場合に一番大切なのは、セラピストの愛なのかもしれません。それがクライアントさんのエゴの活動を弱める効果があるように思うからです。