分離不安

世の中には様々な病気がありますが、その中でも特に精神的に病んでいるという状態にある人は概ね分離不安を強く持っていることに起因すると思われます。

我々は本来自分と周りの区別がない状態のまま生まれ落とされます。しばらくすると、肉体的には自分と親とは違うものだという区別ができてきますが、それでも精神的には漠然とした一体感の中にいるのです。

それがエゴの発達に伴って、自分と自分以外の人とは明らかに違う心を持っているのだという認識をしていくことになります。

この心理的な分離をしていく大切な時期に、何らかの失敗をしてしまうといつまでもその時の分離にまつわる強烈な不安を持ち続けることになってしまいます。

それは不安と言うよりは正確には死と隣り合わせなくらいの大きな恐怖感と繋がっています。それが大人になって様々な神経症などの精神疾患を発症したりすることになるのです。

そうした要素を心の中に全く持っていないという人はいません。そうした不安を抑圧して感じないようにしているか、常に心のどこかで自覚してしまっているかの違いがあるだけです。

分離不安を強く持っていると、無意識のうちに分離しないでいられる方法はないものかと探し続けることになってしまいます。

そうすると、自立することから逃避しようとすることになり、それは大人になることへの拒絶感を生み出します。いつまでも子供のままで親の世話になって一体でいたいと思い続けるのです。

それは結果として強い依存症状を引き起こす事になるでしょうし、発達不全、あるいは発達障害というものまで起こしかねないのです。

とても一人では生きていくことなどできないとして、親にまとわりつこうとします。親がダメなら親の代わりになってくれる人に激しく依存しようとするはずです。

分離不安をなくしてしまうことはできませんが、受身の生活から与える側に意識を変えることができたら、少しずつでもそうした不安感を小さくしていくことができるはずです。