宇宙は、私たちを決して落ち着かせないようにと強いているのだと言われたら、それを本当だと思えるでしょうか?
理由は定かではありませんが、きっとこれは事実です。落ち着くということが、精神衛生上とても大切なことだと知りつつも、できずにいるのはそういうことです。
完全に落ち着く状態とは、落ちて落ちて落ちて、また落ちて、もう落ちることができないというところまで落ちて、そこで着地することを指します。
そう考えたら、それがどれほど普段の我々にとって難しいことなのか、容易に分かっていただけると思います。
落ち着くとは、あらゆる精神活動を停止してしまうということでもありますが、落ち着きにくいように、私たちは作られてしまったのだと思ってもいいかもしれません。
一つだけ思い当たる理由として考えられるのは、充分に落ち着いてしまうと、個人ではいられなくなるからだと思います。
私たちが個人としての自覚を持ちながら、人生を生きるには、決して落ち着いてはならないのです。私たちは走り続けるしかできません。
立ち止まったら最後、個人としてのこの「私」の化けの皮が剥がれてしまい、その瞬間に全体性へと戻ってしまうはずです。
精神活動は、そうならないためには是非とも必要なものなのです。その精神活動のほとんどは、自己防衛のために使われています。
精神活動をやめて、自己防衛をなくしていくことで、この世界には敵がいないということに気づくことになるのでしょう。
それでは、何かを恐れ続けたり、憎しみ続けることが不可能になってしまいます。その結果、他者との距離がなくなっていくことになります。
最後に残るのは、この現象界を生み出し続けている源泉としての自己です。もしも、私たちの三分の一くらいの人が落ち着くことができたら、この世界はどうなるのか、楽しみですね。