個別性から全体性へ

最近ではだいぶ知れ渡った情報だと思いますが、働きアリのファミリーを観察していると、ある一定の割合で怠け者のアリがいるそうですね。

そのアリたちは、一切働くことをせず毎日ぐうたらした生活を送っているのですが、ファミリーの誰も彼らを責めることもせずに共存しているのだとか。

仮に彼らだけをファミリーから排除してしまうと、しばらくすると働きアリだったものの中から、怠け者のアリが出現するらしいのです。

そして全体としての怠け者のアリの割合が一定に保たれるようになっているということです。すごいシステムですね。

彼らの存在理由は何だろう?ということでそれを突き止めた人たちがいるのですが、彼らはリスク回避のための要員らしいのです。

何らかの理由で、働きアリたちが死んでしまったり、疲労したりしてその数が減ってしまった時に、怠け者のアリたちが突如として働きアリに変身するのだとか。

そうやってファミリー全体での不測の事態に備えているということです。私たちはどうしてもアリ一匹一匹を個別に見てしまうので、不思議な感じがするのですね。

ファミリーを一つの生命体と捉えてみるなら、働いている割合と休んでいる割合をうまくバランスしている我々の日常と同じだと考えることができます。

もう一つ興味深い生物があるのですが、それはアリの巣の中でずっと暮らしているのですが、アリにおんぶに抱っこ状態、言うなれば介護された状態で生きているのです。

アリからしてみれば、全く異なる種類の生物の世話を毎日しているのですから、こんな理不尽な話はないのですが…。

アリのファミリーが彼らよそ者を特別待遇しているにはきちんとした理由があるのです。なんだか分かりますか?

実は、食料が足りない緊急事態が訪れた時に、それまで介護してきたその生き物を食料として食べてしまうのです。

これもリスク回避のための作戦だったわけですね。介護される側の生物としても、巣の外の世界で生きて敵に襲われて命を落とす方がリスキーだという判断があるのでしょう。

こうしたカラクリも、一つの大きな生命系と考えるなら、実にうまい仕組みが出来上がっているなと思わざるを得ません。

私たちが個別性をみる習慣を脱ぎ捨てて、代わりに全体性を見るようになるなら、人類への見方も大きく変化することでしょうね。