癒しには大きく二種類のものがあると考えられます。一つ目は、一般的に知られている標準的なものであり、簡単に言えば人生というストーリーの中での方法です。
私がセッションで行っている催眠療法などは、その典型的なものと言っていいかもしれません。心の中に燻っている過去の傷(と本人が思っているもの)を洗い出して、開放するのです。
そうした過去の傷を隠していると、その傷が現在にまで当人を追いかけてきて、何らかの方法で毎日の生活を妨害することになるのです。
本人はなぜ自分の人生がこうなってしまうのか、どうしてこんなに不自由さを感じてしまうのか、その理由が分からずにいるため、その本当の原因に気づくまでは苦悩が続きます。
過去から追いかけてくるそうした痛みや苦しみは、そこでしっかりと受け止めてあげることができれば、日々の生活への影響を少なくしていくことが可能です。
こうした標準的な癒しの方法によって、それなりに快適な人生へと向きを変えていくことは確かに可能です。しかし、それでも心の奥底に潜む得体の知れない苦悩が、今度は目だってきてしまうのです。
したがって、癒しはこの「標準コース」で終わるわけではなく、次の段階へと進む必要があるのです。それが、冒頭お話ししたもう一つの癒しの方法です。
それは、端的に言えば、「私」というものへの見方を変えていくことにより、真理へと向かうことによって根本的な苦悩からの開放に至る方法です。
私は個人的には、さきほどの標準コースをショートカットして、いきなりこの二つ目の方法、つまり「最短コース」をやっていくことも可能だと思っています。
ですから、セッションにいらしてくださったクライアントさんには、本心としてはこちらを是非ともお勧めしたいのです。
しかし、即効性があるというわけでもないという点と、それ以外の大きな欠点があるのです。それは、クライアントさんにとってきっと受け入れがたいということです。
なぜなら、クライアントさんの常識や信念、あるいは長年培ってきた自己像などを根底から見直すことになってしまうからです。
そうしたことを受容していただくことさえできたら、そして表面的な効果をすぐに求めずに進めていくことができるなら、この「最短コース」が本質的な癒しであることは間違いありません。
残念なことに、私自身もこの「最短コース」を現在進行中ですので、「標準コース」のように理解できているものではないということも、もう一つの弱点となるかもしれません。
癒しのスタートの時点でどちらを選ぶかは、クライアントさん本人にお任せするしかありませんが、二種類の癒しの方法があるということだけでも、お伝えさせていただけるようになったらいいなという願いを持っています。
また、両方の癒しを同時進行させることも勿論可能です。これが可能であれば、もっとも早期に様々な効果を期待できるかもしれません。