痛みがなくなることはない

心の癒しを進めていくと、いろいろ不自由だなと感じていたことや、苦悩していたことなどが次第に減って行き、徐々に楽になっていきます。

ご本人にとっては、それはとても大きな変化がやってきてくれたなと嬉しく感じるはずですね。あの辛さは一体何だったんだろうと疑問に思うことすらあるかもしれません。

ひどい生理痛だったのがほとんど痛みがなくなったり、人が沢山集まる会合などの席にいるのが怖くて仕方なかったのが、冷静にいられるようになったり。

自己表現や感情表現がうまくできずにいたものが、素直に自分の気持ちを伝えることができるようになったりと、癒しの効果は様々です。

しかし、ここで勘違いしてはいけないことがあります。それは、癒しが進んだことで、いやなことや自分にとって都合の悪いことが確実に起きなくなるということではありません。

そうしたことが減る方向に変化することは充分に考えられることですが、それを期待して人生がよくなるというように思うのは間違いです。

人は生きている限り、いろいろな痛みがやってきます。それは必ず来ます。そのときに、自分がどのようにそれに反応するのかということが大切なことなのです。

確かに癒されていくと、起きることの種類というか傾向が変化していくるということは事実として確かにあるのですが、それでも痛みがやってこなくなるということではないのです。

痛みには、肉体的なものや心理的なものなど、数え上げればきりがないくらいにたくさんあるのですが、それをただ痛みとして受け入れることができるかどうかなのです。

長く生きていれば、大切な人を失うこともあるでしょうし、うまく行っていた仕事が立ち行かなくなってしまうことだってあるかもしれません。

信じていた人に裏切られるかもしれませんし、大病をする可能性もあるわけです。そうした痛みを、どれだけ受容することができるかが鍵なのです。

そこが変化しなければ、癒しが本当に進んだとはいえないということですね。拒絶される痛みと受容される痛みとでは、感じるものが違ってくるのです。

不景気のせいで、日々貯金が目減りしていくことに常に不安を感じる人もいれば、一文無しでも笑って楽しくいられる人だっています。

自分の身に何が起きるかではなくて、どう反応するのかということが最も大切なことだし、人がどれだけ成熟しているかということは、そういうところにこそ見えてくるものだと思います。