未来への期待がマインドの生き延びる手段

カーレースの世界最高峰である「F1」がかつて民放のテレビで放映されていた頃は、深夜まで眠い目をこすりながらよく観ていたものでした。

あれはまだ会社員の頃、日本人で初めてF1ドライバーになった中嶋悟選手が今シーズンで引退するという最後のレースを正座して観たことを思い出しました。

誰もが最後に一度だけでも念願の表彰台に彼を上がらせてあげたいと思っていたはずですが、残念ながらその希望は叶えられずにレースは終わりました。

毎回レースが終わるとインタビューアの人が彼にマイクを向けてその日のレースについて感想を聞くのですが、そのインタビューアの人の口癖は、「次回期待しています!」というものでした。

ところが、その日は最後のレースなので次回がないのです。どう言うのかなと思って観ていたら、やはり泣きながら無言でインタビューを終えたのです。

次がないというのは、希望を持つことができないので、その苦しみに直面するしかないのです。「よ〜し、今度こそ」という逃げができないのですね。

考えてみると、私たちは辛いことがあると、この「よ〜し、今度こそ!」によって気持ちを未来に向かせることで、やり過ごすということを日々やってきたのです。

これがマインドのやり方なのですね。「よ〜し、今度こそ!」をやれば、惨めさは回避されるわけです。

けれども次という未来がないときに、初めて私たちは苦悩から逃げずに今この瞬間にいられるのです。

年齢を重ねていくと、次第に次がなくなっていくので自然と今と直面することができるようになっていくようです。

ただし無意識の部分は実年齢とは無関係なので、死んだ時に「よ〜し、今度こそ!」が発動するので、それが輪廻させることになるのですね。