記憶を使わずにいる時間

人間の脳というのは、他の動物とは比べものにならないくらい発達していますね。そしてその中心となっているのが、記憶というメカニズムです。

動物にももちろん記憶力はあります。その記憶力を使って、さまざまなことを学習していくわけですが、人間の記憶力は群を抜いています。

だから人間の学習能力というのは驚くべきものです。円周率を一万桁まで記憶した人もいるし、司法試験に合格するような人も六法全書を暗記するのですからびっくりです。

けれども、一方でその記憶を使うことで思考が止まらなくなるという弊害もあるのです。記憶データというのは単なるデータか、あるいは過去のデータです。

思考はその記憶データをフル活用することで自ら活性化することができるのです。自我はそれをうまく利用することで、過去や未来へと注意を向けるのです。

どれほど発達したところで脳は自分の中心ではありません。思考を止めてみればそのことがはっきりするはずです。

そのためには、記憶のメカニズムを制止させることです。1日の内何度でも、記憶を使わずにいる時間を作ってみるのです。

すると同時に脳の働きとしての思考も止まることになるはずです。そのときに、自分の本当の中心は決して脳ではないと気づくのです。

それと同時に、自分が何者でもないということにも気づくことになり、自分の本性は静寂であり、至福であり、全体性だということが分かるのですね。