共通幻想に気づく

私たちの社会が高度に発展してきた根っこには、共通幻想というものがあるというお話しです。

たとえば、所有という概念がありますが、それも共通幻想の一つなのです。仮にあなたが死ぬまで無人島で一人暮らしをしているとします。

その時あなたの所有物はこれとこれだと宣言する必要があるでしょうか?あるはずないですよね、なぜならこれは私のものだと言っても聞いてくれる人がいないのですから。

認めてもらうべき誰もいないのですから、これは自分の所有物だと宣言しなくてもいいということが分かります。

つまり所有という概念は、複数の人間の間で取り交わされた約束事なのです。これはあなたの土地で、それは私のクルマという具合に。

そして取り決めというのはみんなで共有している約束なのです。実在するようなものではないので、共通幻想と私は呼ぶのです。

あるいは、貨幣なんていうのも共通幻想の最たるものです。一万円札が一万円の価値があると、みんなで決めてそれに従っているだけです。

その紙切れにどんな価値があるのかは、やっぱりみんなのお約束ごとに過ぎません。この共通幻想があったから、貨幣経済が成立しているのです。

実在しないものを、みんなで共有できるというのは人間に与えられた特殊な能力だと思います。

ただしそれはあくまでも社会で生きていくための決め事であって、一人ひとりの内面では真実ではないということをしっかり理解しておくことです。

そうすることによって、社会の中にあって社会に染まらずに生きることも可能なはずなのです。それはとても自然で清々しいものに違いありません。