セラピストの役目とは

セラピストの仕事というのは、クライアントさんが抱えている様々な悩みや問題をお聞きして、一緒になってそれを解決していくお手伝いをするというものです。

解決とは言うものの、私たちが一般的に連想するようなものばかりではありません。問題がなくなる場合もあるし、問題を何とも感じなくなるということだってあるのです。

それは他の言葉を使えば、問題を開放する、あるいは問題を手放すということでもありますね。物理的な解決の場合もあれば、内的な解決の場合だってあります。

電車に乗ると冷や汗と動悸がひどくなってしまうという症状が治るとか、自己表現が出来なかったものが、ある程度は本音を伝えられるようになるなど…。

ときには、肉体の不具合として表面化していた症状が、収束に向かうというようなこともあります。何であれ、改善していくことは嬉しいことです。

けれども、ここにとても大きな罠が潜んでいるのです。懸案となっていることが、改善していくことはすばらしいことですが、それは本質的な変化ではない場合がほとんどなのです。

つまり、何か際立った問題がなくなったとしても、今度は他の問題が浮き彫りになっていくということがあるということです。

本質的な問題というものは、それがどのように現象化していたのかに係わらず、見えないところでずっと内在しているのです。

これが、エゴの最大のトリックなのです。私たちは、表面化した問題が治っていくと、頑張った甲斐があったなと、改善したことを喜ぶのです。

しかし、その実態はといえば、また別の問題が噴出してくるというように、形を変えてやってくることになるのです。

私たちが自分を何とかしようといくら頑張ったところで、そこでの変化は表面的なものに過ぎないということをいつも忘れないことです。

自分のことを、ある「人物」だと信じている限りは、エゴのトリックにやられたままなのです。したがって、セラピストの本当の役目とは、クライアントさん自身が、自分とは何か?ということに気づいていく手助けをすることなのです。