自我を丸裸にする

いつの頃だったか、「……と日記には書いておこう!」というテレビのCMが流行って、その言葉だけが巷で独り歩きしたことがありました。

何のCMだったかなと思って、今ネットで検索してみたら、見つかりました。内容は、こんなものでした。

『今日、僕は偶然みちこさんに会った。可愛そうに、咳をしている。風邪で喉を痛めたらしい。僕は龍角散トローチをあげて、親切に家まで送って行った。嬉しかった。……と、日記には書いておこう!まあいいさ。』

にきび面の純情そうな中学生か高校生くらいの男子をイメージさせるような感じで、ちょっとクスっと笑えるような可愛らしい内容ですよね。

けれども、これを日常的な生活の中で実際にやってしまうと、とんでもないことに発展する危険性があることも事実です。

というのも、初めのうちは自分に都合のいいように記録しておくという自覚があるから大丈夫なのですが、そのうちそのことを忘れて嘘が自分の中で本当になっていく可能性があるからです。

これはとても危険なことです。つまり、自分で自分を騙してしまうことに繋がっていくのです。人生の中でこれほど危険なことはありません。

私たちは、もうすでに一度本当の自分を騙してしまっているのです。3歳くらいのときに、身体と自己を同一視してしまったのですから。

そこで自我を自分自身だと思い込むのですが、その上でまた更に自我の上に別の自画像で装飾してしまうなら、真の自己のことを思い出すなど到底不可能なことになってしまうでしょう。

どんな自分であれ、どんな出来事であれ、なるべく思考を用いずにそのままを体験し、あるがままを見ることです。

その過程で、初めに自我が丸裸にされるはずです。そして、その後自我よりももっと近くにずっとずっと在り続けていた本当の自己に気づくことになるのです。