盲導犬に教えられたこと

マンションの近所に、盲導犬を育成している施設があります。そのため、近所をクルマで通ったり散歩したりしていると、盲導犬の訓練をしている場面に出くわすことがよくあるのです。

盲導犬のタマゴに対して、訓練係の人がアイマスクをした状態で、実際に歩道を歩いたりしているのです。

その姿を見るたびに、あるテレビ番組で見た盲導犬の一生のような物語を思い出すのです。

生まれてから一年くらいは、一般の家庭で普通のペットとして飼われるのですね。その家の子供達と仲良くはしゃぎながらの楽しい毎日。

ところが、ある日突然盲導犬として育成されるために、施設へと連れていかれてしまうのです。子供達との別れはとても悲しいのです。

訓練を受けたからと言って、実際に盲導犬として独り立ちできる犬はわずかだと聞いたことがあります。

それはそうでしょうね、犬にだって向き不向きというものがあるはずですから。同じように訓練を受けたとしても、合わない犬だっているのです。

目の不自由な方々の文字通り目となって働くのですから、運良く盲導犬になれたとしても、そのストレスは計り知れないものがあるのでしょうね。

犬の平均的な寿命よりもかなり短い命になってしまうということです。そして、ある年月盲導犬としての使命を全うした時点で、元々飼ってもらっていた家庭へと返されるのです。

そのとき、家族の誰もが歓迎している中で、その犬はしばらくなにが起きているのか分からずに、じっとみんなをみつめているのです。

そしてふと気がついて、思い切り元の飼い主たちのところに走って飛びつくのです。その姿は涙なしでは見れません。

絶対に走ってはいけない、決して飛びついたりしてはいけないと長年訓練されてきた、その規則を一瞬にして忘れたかのように家族の元へと飛び込んでいくのです。

そしてそこから短いですが、幼い頃と同じ自由な人生を生きて死んでいくのですね。私たち人間にも同じことが言えるのだと思います。

社会はある意味過酷な場所です。さまざまな訓練を受け、規則で制限された生き方を強いられるのですから。

それでも、いつかは幼い無邪気なころの自分をしっかり思い出して、あの自由だったころのように、楽しく無防備に生きることができたらいいのにと思うのです。