原体験 その2

昨日の続きですが、その最初の体験をした後、自分のことは自分で守らねばならないという意識が発生します。それまでは、自分と親とは精神的には一つものであったのですが、この時を境に分離が起きてきます。そして、このときに発生した、自分を守らねばという意識がエゴというわけです。

エゴは惨めな情けない弱々しい自分というものを隠そうとします。それは、自分からも他人からも隠さねばならないのです。そうしておいて、自分は強いんだ、自分は大丈夫なんだという姿を外部に対して見せようとします。

その発達段階で出来上がるのがエゴの防衛システムです。エゴは惨めな自分を隠しつつも、その惨めな自分をそそのかして、昨日説明したような投影をすることによって、本人の人生で惨め体験を繰り返させてしまうのです。

そのすべてがエゴの防衛システムのなせる業なのです。エゴはそれを正当化するために、本当は両親に愛されていたんだということとか、防衛するのに不都合なことをすべて隠そうとします。

つまり、愛されている自分というものを知っているのに、それを否認することで抗議活動を続けられるようにと仕向けるのです。エゴは愛を否定します。なぜなら、愛されていることを認めてしまうと、防衛することができなくなってエゴは衰退してしまうからです。

セラピーでは、通常、原体験もしくはその後に発生した似たような惨め体験を思い出して、その時に溜め込んでしまった感情を味わって開放することで、惨めな投影を止めていくように仕向けます。

ただ、それだけではエゴの作戦に勝てないので、エゴから切り離された愛の部分にしっかりと目を向けることをやっていく必要があります。エゴが邪魔をするのでなかなか認めたくないのですが、実は親の愛をしっかり受け取っていたということを思い出していただくのです。

そのことを充分に認めたうえで、もう抗議活動はできなくなるけど、その方が幸せになることができるということに目を向けるのです。そうすることで、無意味に繰り返されていた投影も、そしてエゴの防衛も力を失っていき、結局愛に気づいた平安な心を取り戻すことができるようになるのです。