何であれ味わいきること

小学生の頃、ある時期だけですが紙飛行機を折って飛ばすということが流行ったことがあったのです。といっても、全校レベルではなくて、クラスの自分の周りの友達だけ、しかも男子だけだったと思います。

休み時間になると、飛行機を作っては飛ばして、誰のが一番性能がいいかを競うのです。そのうち、折り方を工夫してみたりしているうちに、それなりに腕が上がって自分でも驚くほどによく飛ぶ飛行機を作れるようになりました。

そんなある日、あり得ないくらいにバランスのいい飛行機を作れたことがあったのです。前後左右のバランスが絶妙だったのでしょうね、風がなくても真っ直ぐに(記憶では)どこまでも飛んだのです。

嬉しくてうれしくて…。ところが、それを周りのみんなに披露する前に、知らない誰かに踏んづけられてしまったのです。慌てて、一生懸命手直ししたのですが、どうやってもそれまでのようには飛ばなくなってしまいました。

その後、何度も同じくらいよく飛ぶ飛行機を作りたくて熱心に作り続けたのですが、どうしてもあれほどの飛行機を折ることは二度とできなかったのです。

もう50年くらい前のことなのに、鮮明に覚えているのですから、きっとすごく残念で悲しかったのだろうと思います。どうも、自分の人生には有頂天になっていると、ドスンと落とされるということが起きるのです。

その落差のダメージはとてもきついと知っているので、嬉しいことがあってもそれほど手放しで喜ぶことを控えておこうというやり方が自然に備わってしまったようなのです。

これも一つの自己防衛の方法なのですね。みなさんにも似たような自己防衛の方法があるのではないでしょうか?自分を傷つけたくないという思いからのことなのですが、今考えると何ともったいない生き方だろうと思うのです。

嬉しいときには、徹底的に悦び、悲しいときには思い切り悲しめばいいのです。傷ついたら、その傷の痛みをしっかりと味わってあげればいいのです。

そうやって次第に防衛が緩んでくれば、その分だけ愛を感じる清々しい毎日を送ることができるようになるのです。是非、貪欲にたくさんのことを味わい感じるようにして欲しいと思います。