今この瞬間の意識には否定ができない

日々のセッションの中でクライアントさんにお伝えしていること、それは自分の心からやってくるどんな声でも、それらを丸ごと受け止めて下さいということです。

心の声というのは、そのほとんどが過去からやってくるものだということも理解していただく必要があります。私たちの反応には、動物的な反応と心理的な反応の二つがあり、後者はすべて過去にその原動力があります。

そういう意味からすれば、心の声がいかに過去からやってくるものかを理解していただけると思います。その過去の自分の訴え、気持ち、想い、そういった一切合財を一つひとつ丁寧に受け止めることです。

そうすると、悪いことをした自分、意地悪をしたり、裏切ったり、ウソをついたりした自分のことも受け止めるということですか?と聞かれることがあります。

私がお伝えしているのは、その時の自分の行為についてではありません。その行為をすることになった原因となる気持ちや想い、感情などについて受け止めて欲しいということです。

たとえば、誰かが思い余って人を殺してしまったとします。殺人という行為をそのまま認めるということではなく、そうした行為に及んだ原因を作ったその人の心の在りようを受け止めるということなのです。

どんな心の状態であれ、そこに悦びがあっても、あるいは殺意があったとしても、もしもあなたが今この瞬間に意識があるのなら、それを否定することはできません。

受け止めるとはそういうことです。否定したい気持ちを抑えて、肯定的に捉えようとするということではありません。もしも、否定的な気持ちを抑えようとするなら、その思いは過去からのものだということを知る必要があります。

自分の心の状態を恣意的に何とかしようとするなら、それも過去の自分がやっていることです。過去の心は、そのほとんどが否定で成り立っています。

今この瞬間の意識には、否定はおろか肯定すらありません。どちらも不可能なのです。もしも、あなたが何かを肯定できる、否定できると思っているなら、その時には思考の中にいて過去に生きているということです。

その背後に無限に広がる純粋な意識というあなたの本質が在ることに気づけばいいのです。何かを否定しながらも、否定が不可能な本質に気づいていることができるのです。