流れの中で

私たちは、自分のことを尊重することは大切なことだと信じていますが、そこにはもしかすると大きな間違いが潜んでいるかもしれません。

それは、自分という存在は単独で価値があると思おうとすることと同じように思えるからです。実は、私という存在というのは与えられたものを与えるという連鎖の途中にあるということ。

その流れを堰きとめてしまうと、自分を含めたすべての価値がなくなってしまうのです。与えることは与えられることと一つであると分かれば、手に入れることで満足するという発想こそがその流れを止めてしまう元凶であると分かるはずです。

この時間の世界では、与えることが先に起きて、その後に与えられることがやってくるように知覚するようですが、本当は同時です。そしてその流れの中にこそ、自分を含めた価値があるのですね。

このことは、この世界の経済のメカニズムにも同じような部分があると見て取れます。つまり、自分や家族の未来を守るためにせっせと貯金をするということは、お金の流れをそこで堰きとめるという面があるのです。

経済の活性化はお金の流れをよくすることが絶対に必要なことなのは言うまでもありません。日本という国は世界一の借金大国なのですが、国民の貯蓄という面ではとても金持ちでもあるのです。

それは、個人の幸せを重んじるあまりに、一人ひとりが防衛にエネルギーを注ぎ込み過ぎてしまい、もっと大きな有機体としての国家などのことを疎かにしてしまっているということです。

それは実は本末転倒であり、有機体を全体としてみたときに、その中を新鮮な水が流れ続けることによってのみ、私たちは意味があるということを思い出す必要があるのです。

人との活動的な関係性の中にこそ、与え与えられるという流れを継続することができるのです。そこにこそ、私たちの全価値を見出すことができると思うのです。

そしてそれは、一人ひとりが満ち足りた心でこの人生を生きるということに直結すると思うのです。それを忘れないように、この現実の世界で自由に泳いでいきたいものです。