色、形、音、感覚、味、匂いといった経験はあるけれど、モノという経験はないのですね。ここでモノとは、机、椅子、身体、空、人などのことです。
また、あらゆる経験において、いつ(時間)という経験は一つもないというのも事実です。
あるいは、あらゆる経験において、何処で(場所)という経験は一つもない。これも事実です。
さらに、あらゆる経験において、私の(所有)という経験は一つもない。誰かの、というのがないということ。
こうして見てみると、思考で作り込んだ概念などについての直接的な経験はしないということなのです。
こうしたことをしっかり検証することができると、日頃の経験で私たちがどれだけ想像の中で生きているかが見えてきます。
となると、例えば、「昨日の夜仕事帰りに職場のみんなと一緒にカラオケに行って、久しぶりに盛り上がった」という記憶があったとします。
ここで、昨日の夜という「時間」はないし、職場のみんなという「モノ」と「所有」はないし、カラオケに行くという「場所」も「行為」もないのです。
盛り上がった感覚だけはリアルだと言ってもいいかもしれないですけどね。