ヒーリング日記その12

ヒーリング日記その12

 16回目のセッション。この2日前、サイコドラマという精神療法を受けた。自分の中で思い残しになったり、傷になった過去の体験や状況等をドラマの形で再現し、その時の感情を味わったり、当時言いたかった事ややりたかった事をドラマの中で表現するという手法である。この療法により、過去の感情のしこりが開放されたり、過去の自分を客観視する事ができたり、と過去を”手放す”きっかけになる事もあるという。以前から興味があり、やってみたいと思っていたが、初めてなのでちょっと緊張してしまう。

 10代の頃の家庭の状況を再現する事に。親役、兄弟役、自分の役の人を決め、当時と同じ状況を作り、できるだけ記憶に忠実に再現する。当時親から言われた事やされた事を親役の人にやってもらうと、当時の自分の記憶や感情が生々しくよみがえってくる。心がその頃にタイムスリップしたかのようだ。

 結局、私の場合怒りも涙も出なかったけれど、胃の所にボールのような存在を感じた。そのボールがドラマの最中ずっと激しく回転しているように感じられた(今から思えば、そのボールはドラマ中表現できなかった感情の塊だった気がする)。

 サイコドラマとして、人前で表現する事により、自分の中に押し込めていた記憶を、自分にもその場にいた人達にも『本当に起きた事なのだ』と宣言する効果もあったと思う。また時間をおいて、やってみたい療法だ。

 ドラマが終わってその日からまた過食嘔吐が始まった。翌日はほぼ一日中家で寝ていた。思った以上にエネルギーを消耗したらしい。

 この日もまだ影響が尾を引いていたのか、なぜか胃が痛い。ヒーリングが始まってものの5秒ほどで、身体がビクっと動き始める。身体がグーっとのけぞり返ったり、ヒーリング中の呼吸が震えてきたりと、今日もまた一段と反応が大きくなっているようだ。やはり、ドラマの影響もあるのではないだろうか。

 胸に手が置かれ、程なく大澤さんが 『うわー悲しい』 とおっしゃる。どうもハートにある私の感情を味わっておられるようだ。でも私の感情を大澤さんが感じて、私が感じないなんてヘンな話だな...。なんて思っていると、大澤さんは、当てていた手を止め、ティッシュで鼻をかみ始めた。泣いておられるようだ。えー!!マジですか?!

 まさか、セッション中に私ではなくて大澤さんが泣き出すなんて、想像だにしなかった。 『ハー、やられたあ』 と大澤さん。後で伺うと、いつもは私のエネルギー(感情?)をかわしつつヒーリングをするそうだが、この日は直接対決(?)をしたらしい。モロにエネルギーと向き合い、ヒーリングしていてエネルギーにやられてしまったようだ。しかしまあ、すごいなあ。男性を泣かせてしまった事に一抹の罪悪感を覚え、お詫びした。

 大澤さんが涙するほどの激しい悲しみのエネルギーが私の中にあるようだけれど、何故私はそれを感じる事ができないのだろう?大澤さんは 『今までの人生が辛すぎて、まともに向き合っていたらとても生きていけなかった。だから心と身体を分離させて何とかやってきたんだよ』 とおっしゃる。

 確かに、自分でも深い悲しみの感情がなかなか出てこないのは承知している。でも今日のように目の前で自分のエネルギーを(大澤さんが代行してではあるけれど)確認すると、こんな感情が自分の中に存在しているのか...と改めて驚いてしまう。自分を癒していけばそのうち感情とつながるらしいけど、私が本当の自分の感情とつながったら、私はどうなるのだろう?激しい怒りや悲しみと直面したその後、今の私とは全く変わってしまうのだろうか。