リラックスということ

 私たちは日々の生活の中であれこれと多くの緊張を強いられて生きています。緊張している状態よりもリラックスしている時の方が身体にいいということは誰でも分かっているのですが、気がつくと肩や背中に力が入ってしまっています。どのような状態の時に、どれだけ緊張するかというのは、人によって千差万別ですが、自分は人よりも緊張しやすいのではないか、あるいは絶えず身体のどこかに力が入ってしまっているような気がするという人は思いのほか多いのです。

 当オフィスに来られるクライアントさんの中には、催眠状態への誘導を行っただけで、何だか身体が楽になったという方々がいらっしゃいます。また、ヒーリングのセッションの後は、ほとんどの方の表情が変化します。幾分血色がよくなり、まるでお風呂から上がって出てきたときのような感じになり、セッション前と比べて相当に変わってしまいます。ご本人がそれを自覚されている場合でもされていない場合でも、一見して穏やかな雰囲気になっています。明らかに全身の力が抜けて、リラックスしていることが分かります。オフィスに来られる時には、何かの理由で心身ともに緊張されていたのだなということが分かります。

 多くの人の注目を浴びながら何かをしなければならない時、、あるいは大切な面接試験の時などの外的要因によって緊張してしまうということは、誰でも経験していることですし、その外的要因から開放された時には一般的に緊張からも開放されることになります。しかし、緊張の原因が内的な要因であるような場合はどうでしょう?内的要因で緊張する場合というのは、緊張を招くような要因が自分の周りには何もないと思われるような時にでも緊張してしまう場合を指します。例えば、子供の頃に絶えず母親から、『何ぐずぐずしてるの?早くしなさい!』などと叱られて育ったような場合には、大人になってもいつも何かにせかされているような感覚が残り、緊張が続き、ゆったりとできなくなってしまうことがあります。小さい頃に父親にひどく怒鳴られたり、叩かれた場合には、大人になっても(特に女性の場合)男性一般に恐怖心が残り、そばに寄られただけで緊張する、あるいはそれを想像しただけでストレスを感じるといったことが起きてきます。

 緊張を起こさせる内的要因のもう一つのものは、絶えず頭で何かをぐるぐると考えている状態というのがあげられます。何か気になることがあったり、常に物事を分析したりと左脳をいつも働かせている状態では、やはり緊張が解けません。この状態を寝る前などに長く続けてしまうと、床に入っても頭が覚醒してしまいなかなか寝つけなくなってしまったという経験は誰にでもあるでしょう。

 そのような内的要因によって緊張してしまう場合には、要因が現実として存在するわけではないために、一般的に緊張が継続してしまうことになってしまいます。元々、緊張すること自体が悪いわけではなく、適度の緊張感というのはむしろ生活の中で必要なものかもしれません。問題は、その緊張感が持続してしまい、開放されないことにあるのです。外出から帰って一人部屋の中にいても、ゆったりとできずに気がつくと前かがみに座っていたり、何か身構えているような気持ちがしたり、朝目がさめた時にもずっと緊張していたような感覚がしたりするのです。

 このように、内的要因によって緊張がずっと続くといずれ心身に異常を起こしてきます。人間の身体はそのようにできていないからです。軽い場合ですと、慢性的な肩こりや頭痛など、ひどくなると様々なやっかいな病気を引き起こすことになってしまいます。緊張を解いてリラックスすることがいかに大切なことであるかが分かります。要は一時的に緊張しても、すぐにリラックスできるようになっていれば、病気も軽くなったり治ってしまうということです。

 クライアントさんの中には、緊張が続いていてなかなかリラックスするということができないという方が多くいらっしゃいます。そういう方は、首、肩、背中のどこかあるいは全ての部位がカチカチになっています。なぜ、リラックスすることがむずかしいのでしょうか?それは、例えば力を込めて握りこぶしを作って1分たってから力を抜くことはできますが、限界を超えて1時間も握りこぶしを作ったままにした後では、簡単には指が離れなくなってしまうという現象と同じなのです。長時間の緊張は、緊張を解いてリラックスすることをむずかしくしてしまうのです。

 では、リラックスするにはどうしたらいいのでしょうか?単純に、どんな内的要因があるのかを探り出し、それを手放してしまうという方法があります。そのためには、セラピーなどを受けることが手っ取り早いのかもしれません。催眠療法などで、子供の頃の体験を見直して、感情を開放しながら別の解釈をしていくことで心の中のわだかまりを手放して行くということもできるでしょうし、ヒーリングを受けることで忙しく働かせてばかりいた左脳を休める事を体感するのも効果的です。

 またもう一つ、誰でもできてそして自分一人で手軽にできる有効な方法があります。それは、身体を強制的にリラックスさせるようにする方法です。心を最初にリラックスさせることはなかなか難しいのです。頭を使うなと言われても、ついいろいろ考えてしまうというように、身体が緊張している状態ではどうしても思うようにリラックスできないのです。しかし、身体だけでもリラックスしてくると、それに連動する形で自然と心もリラックスしてきます。

 一般的には、スポーツをしたり、右脳優位にするために映画を観たり、カラオケに行ったりということが挙げられますが、緊張状態が長く続いている人は心の余裕もなくなっているために、上で挙げたようなこともあまりできなくなってしまうのです。したがって、キーポイントは、いつどこでも手軽に一人でできる方法でなければなりません。日常的にできることがとても大切なのです。セッションに来ていただいているクライアントさんにはいくつか有効な方法をお伝えして、効果が出ているようです。

 もっとも効果的なのは、セラピーを受けることと、日常の生活の中で無理なく身体をリラックスさせるように仕向けていくことを併用することです。両方の相乗効果で知らぬ間に楽になっている自分に気がつくようになります。リラックスは、心身ともに健康であるためにはどうしても必要な状態なのです。1日のうちでリラックスしている時間、あるいはリラックスしようと試みている時間をなるべく長くとるように日頃から心掛けるようにすることが、単純なことではありますが、自分の癒しにとても大きな意味があるのです。是非、ご自分のリラックス度を再チェックしてみてください。