病気について

 病気というのは本当にいやなものですね。子どもの頃、なぜ病気というものがあるのだろう、病気のない世界があったらいいのにと思ったものでした。しかし今になってみると、確かに苦痛で不快なことではあるけれども、病気を起こす原因を作っているのは自分なのだということが何となく分かるようになってきたのです。病気は何かを気づかせてくれるもの、あるいは自分が必要に迫られて起こしているという解釈に変わってきています。なぜそのように考えるようになったのか、例をあげて説明していきます。

 日々いらっしゃるクライアントさんの中には、鬱的な症状をお持ちの方々が多数おられます。少し症状が重い場合には精神科や心療内科などで薬を処方されてる場合が多いですし、軽い場合には鬱症状だとご本人も気づかないでいる場合もかなりあります。いずれの場合にしても、身体が異常に重くて常にだるさや倦怠感などを感じていて、自分は体質的に疲れやすいのかなと思っていることもあります。ひどくなってくると、単にやる気がでないというだけではなく、朝起きれなくなってきたり、今まで自分でできていたことを人任せにするようになったり、しまいにはほとんど身体を動かすこともできなくなり、顔の表情も独特な無表情の状態になったりします。

 こういった症状というのはなぜ起こるのでしょうか?たくさんのセラピーをしていく中で、多くのクライアントさんと接してきた結果分かったことは、今のまま生きて行く事をやめて欲しいと自分自身が自分に言ってきかせている状態だということです。表面的な自分は、何とか疲れやすい体質を改善したいとか、もっとやる気を出して前向きに生きていけるようになりたいとか、こんな怠惰な状態から脱してもっと頑張らねばならないとか思っているのです。しかし、心の奥では、そういう考え方をすべてやめて別の生き方を目指して欲しいと願っているのです。そして、いくら待っても気づいてくれないことに業を煮やして、鬱の症状を起こして訴えることになるのです。

 病院では鬱症状に対応して薬を処方しますが、薬と言うのは鬱を起こしている肉体、特に脳の物理的な部分に作用して、その症状を抑えてくれるので、症状的には軽くなってまた日常的な生活ができるようになります。しかし、自分の生き方に問題があるのだということに気づいて、それを改善していかない限り、根本的には何も解決することはないのです。従って、鬱状態から脱することができたと思って、また同じ毎日の生活に戻ると、またしばらくして鬱の症状が出てくることになります。そしてそれを繰り返す度に益々鬱の症状が悪化して、終いにはどうしようもなくなって絶対安静と薬漬けの入院治療をすることになってしまいます。

 では肉体的な病気についてはどうでしょうか?実はほとんどの物理的な病気も心の問題、本人の生き方にその原因があると考えることが出来ます。例えば、何かの理由でいやなことを我慢ばかりして長い間生活していると、様々なマイナスの感情が心の中に沢山溜まってきてしまいます。心はそれが苦痛なので、感情を吐き出そうとするのですが、本人が無意識的にそれを抑圧するために益々感情の圧力が増してきます。どうしようもなくなった心は、何とか感情を開放して楽になろうとして、身体にお願いしてそれを物理的な毒に変換して、血液の中に送り込むのです。つまり、肉体的な解毒作用を利用して感情を開放しようとするのです。

 このようにして、通常の身体の解毒作用だけでは処理できなくなってしまうくらいの毒が血液中に溜まるようになった時、非常事態として身体は仕方なく特別なやり方を使って毒を解かして体外に排出しようとします。それが病気なのです。身近な例でいうと、風邪をひくと、喉の炎症や咳や痰、鼻水が出るようになったり、熱が出て沢山汗を掻いたりします。これらの症状はすべて毒を出すためのものです。咳は血液中の毒が気化したものを肺から出す作業ですし、痰や鼻水も体液として毒を排出しています。また高熱によって毒を燃やして、発汗することで排出します。だから風邪をひいて治ると、ひく前よりも身体がすっきりとした感じがするのです。

 悪性か良性かに係わらず、腫瘍というのは近くにある太い血管からバイパスする血管を自ら作って成長するため、血液を吸って毒素を取り除いてくれるポンプのような役割をしてくれます。血液中の毒素が極端に多くなった時に、身体が自動的に腫瘍を作って、毒素を排出しようとしてくれるのだと考えることができます。子どもが鼻血を出したり、女性が不正出血したりするのも毒出しと考えてもいいかもしれません。子どもといえば、母源病というのがあります。正式な医学用語ではなく、あるお医者さんが名づけたものらしいですが、子どもと親、特に母親との関係に何か問題がある場合に発病するということでこの名前を付けたらしいです。代表的なものとして、アトピー、小児喘息、気管支炎、中耳炎、自家中毒などがあるそうです。

 アトピーは皮膚に炎症を起こして、毒を燃やして解毒しようとするものですし、喘息や気管支炎も風邪をひいたときの咳と同じ役目をします。中耳炎にしても、身体のどこかに炎症を起こすことは、みな毒を燃やす効果があると考えられます。自家中毒というのは、悪いものを食べていないにもかかわらず、自ら食中毒に似た症状を起こすのです。嘔吐、下痢、発熱など、どれも解毒するための身体の反応です。そうやって、本当に悪いものを食べたときに毒出しするのとまったく同じようにして心の毒を排出しようとするのです。

 こうして考えてみると、病気を単純に忌み嫌う必要はないということが分かってきます。逆に心と身体を守ってくれる大切なものなのだという認識ができてきます。現代医学の考え方は、病気を敵対視して、病気の症状を抑えることのみを追求してきたと言えるかもしれません。発熱するとすぐに症状を抑えることだけを考えて解熱剤を服用するなどということが、かえって身体に悪いということに気づかなければならないと思います。発熱は大切な解毒作用があるからです。ただ、あまりに熱が高くなってきた場合には、別の問題を引き起こす可能性がでてきますので、そういう場合には解熱剤を使うという具合に臨機応変に考えるのです。

 精神的な病気であれ、肉体的な病気であれ、あるいは病気とまでは思えない程度の不調であっても、それらすべては心の問題が元となっているという、文字通り『病は気から』ということを再確認することです。そして、病気になったらとにかく今の自分の生き方、考え方をよくよく見直してみることです。現代人の多くはストレスを抱えて生きていますから、風邪をひく程度なら何も問題はありませんが、しつこい病気で困っていたり、重篤な病気にかかってしまった場合には、特に自分の人生を振り返って、自分のためにしっかり生きてきたかどうかをよくよく見つめてみることです。

 自分癒しを進めていって、自分を変えていけば病気は治っていきます。それは病気を起こす原因となっているマイナスの感情エネルギーが解放されるために、毒出しをする必要がなくなってくるからです。末期がんの宣告を受けた人が奇跡的に回復してしまったというようなケースがありますが、それは実は奇跡でも何でもなく、本人が自分の心の問題に気づいてそれを解決したために治ったということに過ぎません。

 さきほどの咳のことで一つ思い出したのですが、ヒーリングのセッション中に、時々咳をし始めるクライアントさんがいらっしゃいます。場合によっては、ヒーリング中ずっと咳をし続けるということもまれにはあります。そして不思議なことに、ヒーリングをしている私自身も咳をしたくなったりするのです。ヒーリングに限らず、癒しを進めていく初期の段階では、風邪もひいていないのに長く咳が続いてみたり、手足がジンジンするような感覚になってみたりします。こういったことは、すべて身体を使って毒出しをしている状態と考えることができます。病気になる代わりに、意識的に心と身体の毒を出してあげることが癒しそのものであるとも言えると思います。