感動は続かない

自分はどうも辛かったときのことを忘れていくタイプのようで、じっくり思い出そうとしない限り、以前よりも数段楽になったということに気づかなくなってしまいます。

とにかくすべてにおいて辛かった会社員時代と今の生活を比較したら、どれほど気持ちの余裕ができたのかたとえようもないくらいなはずです。

それなのに、今は今でこの生活が当たり前になってしまいました。もちろん、今が夢であって目が覚めたらあの頃の会社員のままだったなんてことがないことを祈りはしますが…。

こうした過去の辛さを忘れる傾向に気がついたときには、自分て本当に損な体質だなと思ったこともありました。数年前にとても激しい感情の開放をした後、対立がすごく薄くなっているのに気づいたのです。

それは自分としてはものすごい変化だったので、そのときのことをよく覚えているのですが、歩く速度などにも影響してしまうくらいの大きなインパクトがあったのです。

とても感動もしました。ところが、一週間二週間と経過していくうちに、徐々に今の自分が自分にとってごく普通の感覚になっていってしまうのです。

そうすると、気持ちがどれだけ楽になったかということも忘れて、今の自分を基準にすべてを見るようになってしまい、こんなに楽になったよ!という感動も消えていってしまうのです。

これは本当に残念なことですが、仕方のないことでもあるとして受け入れなければならないことなのかもしれません。

どんなすばらしい体験をしたとしても、やはりそれもきっといつもの自分に戻されてしまうのだろうと最近は思うようになりました。

そうなると、そうした体験というものをとりたてて期待するということもなくなってきたように思います。感動は感動であり、それは所詮来ては去っていく風のようなものですから。

そう考えると、今まで以上に何か淡々とした生き方というものに価値があるのかもしれないなあと感じるのです。なんでもない普通がすばらしいんだなと。