いつかはどこかに流れ着く

会社員だった頃のことですが、ある朝出勤しようと外を歩いていたら、どこからか沈丁花の芳しい香りが漂ってきたのです。

きっと今ごろの季節だったのでしょうね。朝の時間、少し肌寒さを感じていたように記憶しています。

その瞬間、アレっという感じがしたのです。それは、きっと言葉にすると「この感覚で元々は生きていたはずだ!」というものです。

そのころは仕事地獄にハマってしまっていて、本来の自分の感覚を殺して日々生きていたのでしょうね。

それが、沈丁花の香りのおかげで一瞬にして本来の自分の感覚を思い出させて貰ったということなのだと思うのです。

そのくらい、ちょっと衝撃でしたね。その瞬間、いったい自分は毎日何をやっているのだろうと思ったのです。

ところが、それも束の間、またすぐに仕事のプレッシャーに追われる日常のあの感覚に乗っ取られてしまいました。

人間て、乗っ取られている時にはそれと気付かずにいられるのですね。それは、都合がいいと言えばいいのですが。

逆に言えば、気付けなくなった状態で人生が続いていってしまうわけで、それは非常に危険なものだろうなと。

私の場合は、大腸癌を患ったことがきっかけとなって本来の感覚を取り戻すことができて、今に至ります。

それはとても幸運だったなあと。気付けない状態の人に他人が何を言ったところで難しいのですね。もどかしい限りですが。

それでも、物語は流れていくもので、いずれはどこかに流れ着くものですね。