傷ついた心

催眠療法のセッションの中で、時としてクライアントさんの幼い頃の状態が悲惨な様子で見えてくることがあります。

あるときは、ものすごく傷だらけで身体からは血がたくさん滲んで出ていたり、擦り傷や打撲、骨折していたり赤黒く顔が腫れたりしていることさえあります。

こうした姿というのは、幼い頃のクライアントさんの心の様子を表していると言えるのです。ボロボロに見える服を着て、身体も汚れていてお風呂にもろくに入ってないような場合もあります。

勿論、現実にそうしたことがあったわけではないのですが、心の状態を視覚化することによってそんなように見えてしまうということなのです。

ご本人もそんな子供の頃の自分を見て本当にびっくりしてしまうのですが、どうして今まで気がつかなかったのか不思議な思いに駆られるかもしれません。

そんな悲惨な様子を目の前にして、大人の自分はどうすればいいのか分からなくなってしまうものです。身体に触れたらそのか細い身体が壊れてしまいそうに感じるからかもしれません。

しかし、もっと驚くことがそこには隠されています。それはそんないたいけな傷ついた自分を可愛そうと思うだけでなく、その逆に憎んでさえいる意識があるということです。

そんな惨めな情けない自分など、自分ではないとして無視しようとしているのです。そして、自己嫌悪の元となるために、その子を激しく憎悪しているのです。

ご本人にとって、本当に傷ついた心というのはそのようにして、自覚のないところで切り捨てられてきたということです。

このままでは決して心を癒していくことはできません。一つは、その傷ついて手の施しようもない幼い姿に寄り添って、やさしい愛のエネルギーで包んであげることです。

そしてもう一方では、そうした痛んだ心を憎んでいる意識に対しても、その気持ちをしっかりと受け止めてあげる必要があるのです。

そうしたことを繰り返していく事で、ほんの少しずつ心の奥にしまいこまれて見ることがなかった傷ついた心が癒されていくことになるのです。