セラピスト(カウンセラーでもいい)というのは、とかくクライアントさんから投影される立場にあるのです。それを心理学では転移と呼んでいます。
転移というと、なにやら特別なことのように思えますが、ごく普通の人間関係における投影と全く同じです。ただ、クライアントさんは何らかの問題を抱えてセラピストのもとに来るわけですから、投影しやすい状態にあるというのは十分に考えられることです。
肯定的な転移もあれば、否定的な転移もあり、それこそありとあらゆるクライアントさん自身の心の問題を映し出す鏡として使われてしまいます。
この仕事を始めて間もないころ、ネット上での中傷的な内容の書き込みをされたこともありました。HPの掲示板などへの書き込みで、いわれのない否定的な言葉を書かれたこともありました。
自分もただの人間ですから、それはいい気持ちがしないことも多かったのですが、転移であることが分かっていたので、半ば興味深く見ていたのを覚えています。
個人セッションの中で直接的に怒りをぶつけられることもたまにはありました。途中で帰ってしまわれたり、遠まわしに二度と来ない旨を言われたこともありました。
それが、気がついたらそうしたことがどういうわけか影を潜めてしまい、最近ではあからさまに否定的な転移をされる経験が非常に少なくなりました。
そう思っていた矢先のこと、多分一ヶ月くらい前だったと思いますが、とある人のネット上での書き込みをたまたま見付けて読んでいたときのことです。
名前は伏せてありましたが、明らかに私のことについて書かれていて、それもこれでもかというくらいに大々的に否定した文章になっていました。
その人の名誉のために、私との関係については言えませんが、とにかくそれは単なる否定というよりは憎しみに満ちた思いで書かれているように感じました。
そこに書かれていることの中には、きっと当たっていることもあるのでしょうが、それでもその人の悲痛な叫びを感じて、とても悲しくなりました。
まだまだ、転移はされるようですが、心底からいたわりの気持ちで受容したいと思います。その人の心が一日も早く、救われることを祈るばかりです。